2011年3月14日月曜日

福島原発の被災とよくわからない健康への影響

東日本を襲った地震で原子力発電所が被災で、原発から放出された放射性物質によって原発の作業員や周辺住民の被爆が懸念されている。政府や専門家は大量の放射線の被ばくの可能性は非常に小さいと言う。だが、公表されている情報が十分でなく、納得のいく説明がなされていないので、少し調べてみた。

国内メディアによると、福島第一原子力発電所の正門では13日午前、毎時1000マイクロ・シーベルト(Sv)を観測した。これは短時間であれば、健康に影響ないレベルだそうだ。

シーベルトという単位は放射線が人体に与える影響を示す。10万マイクロSv(0.1Sv)以上でがんになる人が増加。400万マイクロSv(4Sv)以上で半数の人が死亡するという。ちなみにCTスキャンでも6900マイクロSv程度の放射線を浴びる。

報道によると、12日午後の建屋の爆発後、この原発から10キロメートル以内の病院の入院患者15人から放射性物質が検出されたという。また福島県二本松市に避難している133人を検査したところ19人が被爆(ひばく)している恐れがあると福島県が明らかにした。

原発から3キロの双葉高グラウンドに避難した双葉厚生病院の入院患者ら3人を抽出検査したところ1人から10万cpm(カウント・パー・ミニット)、ほかの2人からも3万〜4万cpmの放射線が測定され、医師によると3人とも「重い被ばく量」で除染の必要があるとされた。

さらに枝野幸男官房長官は13日午前の会見で同原発周辺からバスで避難した人9人のうち4人から1800〜4万cpmの放射線が検出されたと語った。このcpmという単位は、測定器に1分間に入ってきた放射線量を人体への影響は考慮せずに量る単位であるという。

これだけの情報では、どの程度健康に影響があるのかが今ひとつ明確でない。気になっていた現場で作業中に負傷した人々の被爆量だが、国際原子力機関(IAEA)によると、そのうちの一人はIAEAの緊急事態ガイドラインには達しない量の放射線を浴びたという。

どのぐらい距離が離れていれば安全かという判断も難しいようだ。福島の原発の場合、最初は半径10キロメートル以内に住む住民、その後20キロメートル以内に住む住民が避難指示を受けたが、この距離で十分なのか。専門家によると、風向きや地形によって異なるのでひと言で言うのは難しいという。大量の放射性物質が広がったときは外に出ず、窓などをしっかり閉めておくことが大事だという。

ウォール・ストリート・ジャーナルの英語版12日付の記事では、フロリダ州立大学の原子物理学者のカービィ・ケンバー博士が一般論で説明している。福島原発の原子炉炉心が融解すれば、ヨウ素やストロンチウム、セシウムといった放射性物質も漏出するだろう。これらの物質は塩一粒の4分の1くらいの大きさで、風で飛ばされる。粒が大きければ大きいほど、一層速く空気中から落ちることになるという。

一方、健康への被害は放射線の量だけでは論じられないという指摘もある。非営利団体「放射線と公衆衛生プロジェクト」のジョセフ・マンガノ事務局長は、ウラニウムを高熱で分裂させる過程で百位以上の新たな化学物質ができ、それが大気や食物を通じて健康被害を起こす可能性があると指摘。 「これらの物質がいったん人体に入れば、暴れ牛が陶器の店に入るような事態になる。人体で暴れ、正常な細胞を破壊する」という。

今回の事態は1986年のチェルノブイリ原発のような大規模な環境汚染を起こすことはないとの見方が大勢だ。しかし炉心が溶融するメルトダウンが起きなくとも、原子炉内の圧力が増し、格納容器に亀裂が生じたりすればかなりの放射性物質が漏出するとケンパー博士は指摘する。

われわれは最悪の想定を上回る事態が起きないとは限らないということを知ったばかりだ。可能性がゼロではないことは頭に置いておきたい。

 

0 件のコメント:

コメントを投稿