2011年6月15日水曜日

スーツ選びのポイント

スーツ選びのポイント
 スーツの袖の長さは、ワイシャツの長さよりも短く。スーツの袖口を痛めないためです。
ポケットのフラップ
 ポケットのフラップは、室内では中に。屋外では外に出すのが正式。もともとポケットにフラップはありませんでした。フラップを付けたのは、ジャケットのポケットに弾を入れて狩猟に行ったら、雨が降ってきて使い物にならなったから。それを防ぐために英国で考案されたのが始まりと言われています。フラップは、ポケットの中に入れてあるものを守るために付けられたものなのです。
 ビジネスシーンにおいては、左右のフラップが同じ状態になっていればどちらでもかまいません。ただし、フラップがシワになっていたら、中に入れておきましょう。
 

格好良い仕様書には良い図解があるもの

 仕様書などのドキュメントを書いていると、「ここは図示したい」「図を描いてみたけどどうもいまいち」ということ、営業が作る提案書がやたら格好良くて「自分もあんな風につくれたら」と思うことがあるはず。少なくもぼくはある。

リーダーの仕事は環境作り

 人や組織を率いる立場にある人にとって、一番大切なのは、ステークホルダー全員のメリットを考える姿勢と、一喜一憂せずに当初のビジョンを追求し続けるひたむきさだ。

 「グローバルな世界に目を向けると、経営とITは完全に一体化しており、ITは企業の事業線化略、経営戦略と密接に結びついたものになっている」。しかし日本では「今なお、部署ごとにバラバラなシステムが」使われている例もある。企業のインフラとしてのITがこのような状態では日本企業の競争力を高めることは難しい。「まずはインフラを世界標準並みに整備して、その上で日本企業らしい独自の戦略を構築する」ことが必要なのではないか——。

 「経営陣が危機感を持つ」「企業の社会的存在意義を追求する」。こうしたことは企業にとって"当たり前"のことかもしれない。だが、それを実際に行うのは難しい。経営陣のこうした姿勢ゆえに、会社全体が世の中をよくするために働くという気持ちになるのだ。つまり、「当たり前のことを着実にこなし続けるひたむきさ」への共感であるとともに、何か特別なことをするのではなく、日本にとって本当に大切なことを実現してやろうと考えたのではないかと思えるのである。

 「お客さま第一主義/組織間連携とコラボレーションマインド/「最短距離」でのビジネス遂行/戦略実行インパクトの最大化/執念とパッションをベースにしたハートフルなオペレーション」と、「これまた当たり前」の内容だが、「それゆえに重要だ」と主張するのである。

 「誰でも理解できる言葉で説明」しなければ、「組織のベクトルが同じ方向に向かわない」と指摘している。結局、企業や組織にとって、"当たり前のことを当たり前にこなし続ける"ことが一番難しい。だからこそ、一時的に成功しようが失敗しようが、わき道にそれないよう、トップがビジョンに向かって組織を地道にリードする必要があるのだ。

 だが世間を見渡すとどうだろう。組織をまっすぐに導けるリーダーは意外にも少ないのではないだろうか。それどころか、短期的な視点で新奇な計画を立ち上げたり、人目を引くような発言をしたりすることに終始しているケースも少なくない。組織のリーダーは、君臨したり、スタンドプレーをしたりすることが仕事ではない。顧客、従業員、関係会社といった全ステークホルダーがメリットを享受できるよう、むしろ環境を"下支えする"ことが仕事なのだ。

2011年6月14日火曜日

Facebookチェックインクーポン

 フェイスブックの会員がクーポンを取得するのは至って簡単。「Facebookスポット」と呼ばれる位置情報を用いたコミュニケーション機能にクーポン情報が追加される仕組みだ。

 会員はスマートフォンなどのGPS(全地球測位システム)機能を使って位置情報を取得し、表示される近隣の飲食店や小売店などの一覧からクーポンの印がある店名を選ぶ。フェイスブック内の知人に居場所を通知する「チェックイン」と呼ばれるボタンを押すと、クーポンが表示される。あとは店員にクーポン情報を提示すれば特典を受けられる。

 一方、店舗側は掲載期間、割引内容、など、自由にクーポン情報を管理できる。クーポンは1人の来店客向けのほか、複数人の来店で発行するタイプ、複数回の来店に応じて発行するタイプなど計4種類から選べる。

 クチコミ効果も期待できる。フェイスブック内のクーポンは入手したことが知人に通知されて広がるためだ。フェイスブック日本副代表の森岡康一氏は「米国ではクーポン提供中の店舗のチェックイン数が平時の2〜6倍に増加。クーポン提供終了後も通常の倍以上で推移した」と語り、日本での成功にも強い期待を寄せる。

テレビを消して議論しよう

 多くの人間が、これまで社会の中で非常に甘えた状態にあったのではないかと思います。自ら進んで知り、考える習慣というものがなく、何かが起こればすぐ人のせいにして「だから言ったじゃないか」と責任逃れをしてきました。

 しかしもう誰かに寄りかかっているのではなく、一人ひとりが責任を持って発言し、行動する必要があるのです。常に自分で「良いのか、悪いのか」の判断をしなければなりません。そのためには「生涯学ぶ」ことを忘れてはいけないのだと思います。

 仕事で外に出ることなく家庭を守る専業主婦の奥さんは、社会の出来事から縁遠くなり視野が狭くなりがちです。学ぶといっても主婦のお稽古ごとの範囲内に限られるのではないでしょうか。人生のパートナーと、大切な考えを共有できないのは悲しいことです。

 そこで、例えば奥さんに日経ビジネスオンラインを読むことを勧めてみる。それは奥様番組の食べ物ネタや芸能ネタとは全く違ったもので、社会の大きな流れが見えてきます。子育てと家事に追われていた女性が、しばらく遠ざかっていた世界に触れ、考える機会を得ることはとても意味のあることだと思います。

 そして日頃の話題はもっぱら子供のことが中心になっている奥さんと、ときには真剣に大人の会話をするよう努めてみましょう。社会について、日々の生活について、夫婦でありながら実はどのような考えを持っているのか、よく知らなかったりするのではないでしょうか。

 会話の邪魔になるテレビを消して、一番身近な人間と遠慮のない議論をしてみるのは新鮮な時間になるはずです。お互いに意外な意見が聞けて相手を見る目が変わり、家の中の空気が変わるかもしれません。

MBO(経営陣が参加する買収)の光と影

 MBO(経営陣が参加する買収)に踏み切る企業が増えている。実施企業はこの5年で421社に上る(M&A助言のレコフ調べ、2006〜2010年度)。CD・DVDレンタル店「TSUTAYA」を運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)、引っ越し業のアートコーポレーション、ベビー用品大手のコンビなど、その業種は様々だ。

 400以上もの企業がMBOに踏み切るからには、それなりのメリットがあるはず。一般的な説明では、経営陣が自社株を握ることで、「思いのままに会社を運営できる」「業績を上げれば株式の売却益が懐に転がり込んでくる」など、"いいことづくし"に思えてくる。だがしかし、それはMBOの一面にすぎない。

 経営陣が買収に参加するといっても、サラリーマンのポケットマネーではすべての自社株を買い取ることなどできないのが実情だ。通常は投資ファンドがMBOを支援する。その場合、投資ファンドが9割以上を出資し、経営陣の出資比率は数%というケースがほとんどだ。当然、MBO後は投資ファンドが大株主として君臨する。

 一般的に、投資ファンドはMBO後3〜5年でIPO(新規株式公開)して投資回収に動き出す。ならば経営陣はIPOに向けて3〜5年で業績を向上させねばならない。

 MBOの実施前は経営陣と投資ファンドが夢を語り合い、意気投合している。しかし、蓋(ふた)を開けてみれば、経営陣が当初の計画通りには業績を向上させられないことが少なくない。

 挙句の果てに、投資ファンドが経営者をお払い箱にしたケースすらある。MBOとは、まさに自分のクビを賭けて背水の陣を敷く行為なのだ。もちろん短期間で業績を改善させ、経営陣も投資ファンドも大儲けできた事例はある。

組織のルールと個人の裁量

 ルールは目的があるから存在するのです。特に、組織の仕事の多くは何度も繰り返される「ルーティン」といっていいものですから、そうした仕事を、より効率的に行っていくにはルールが不可欠です(この場合、マニュアルと読み替えてもいいでしょう)。ルーティンを効率よく、間違いなくこなし、例外は上司の指示に従うことが、組織の基本です。

 それでは、なぜ我々はルールといった言葉にマイナスの印象を持つのでしょうか。おそらく、その大きな理由は「目的がはっきりしない」ことではないでしょうか。ルールはそもそも目的があって作られるのですが、いつの間にかルールを守ることが目的になってしまうことも少なくありません。何十年も前の、環境も技術も違っていた時代に作られたルールが残っており、なぜそのルールを守らないといけないのか、誰も知らないまま従っていたというような話も時々聞きます。そうした目的がなくなっても存在するルールがはびこると、「形骸化」が起こり、組織に様々な問題を起こすのです。

 一方で、ルールを作るとそれを変えたり、なくしたりすることは簡単ではありません。1つは、ルールをころころ変えると組織の安定性が担保できないという問題があるのですが、もう1つは「ルールに守られた人たち」「ルールがなくなると損をする人たち」が出てくることです。極端な話、組織でいらなくなった部門をなくそうということになれば、そこの人たちは行き場がなくなってしまうわけで、いろいろな理屈をこねて「存在意義」を主張するわけです。人間には「なければないで我慢できる」が「あったものを失うことには大変な抵抗がある」という心理的な傾向があります(ノーベル賞をとったプロスペクト理論と関係します)。結果として、なんだかよくわからないルール、部門がなかなかなくならないのが組織です。

 そうした状況で、組織の的確性、迅速性を高めようとするとどうなるかといえば「弾力的な運用」で調整しようということになります。つまり、ルールを変えるのは大変だから、ルールを否定するわけではないけれど、「グレーゾーン」を見つけて、あるいは「拡大解釈」して現実に沿った手続きをしようということです。これは、一見大変現実的で、うまいやり方のように見えます。しかし「弾力的な運用」というのは、個人の裁量という得体のしれないものに任されるのです。さらに言えば、どうしても低いほう、楽な方に流れます。結果として、どこかで破たんします。

組織の目的vsマニュアル

 おそらく、ルールの中で最もよく取り上げられるのはマニュアルだと思いますが、一般的にはあまり評判がよろしくありません。官僚制と同じように、ある目的を達成するための手段だったはずの組織の構造やルールが、いったんできると「結果はどうあれ守ることが大切だ」と自己目的化するように、マニュアルができると、それをなにしろ守ることばかりが重視され、個人の創造性だとか考える力だとかを奪ってしまうといわれます。運動会かなにかでじゃんけんに負けた1人が大勢の分のハンバーガーを買いにマクドナルドに行き、100個注文したところ「こちらでお召し上がりですか」と言われたという、ほんとかどうか分からない笑い話は、こうしたマニュアル第1、考え第2の「マニュアル弊害論」を象徴する例だと思います。

 しかし、よく考えてみると、そうした「マニュアル」の最高峰(あるいは権化)であるといわれているマクドナルドでも、働いているアルバイト、社員の行動、サービスレベルは必ずしも「均一」ではありません。なぜ、同じようなチェーンで、あるいは場合によっては同一チェーン内でも、違いが生まれるのでしょうか。

 吉野家の安部修仁社長は「要は、マニュアルの背後にあるものをどこまで理解させられるかだと思うんです。そのためには、店内でも頻繁にミーティングみたいなことをやるし、社内報ならパート・アルバイトもみんな見ますから、そこでフィロソフィーを訴えていく」ことを強調されています。ディズニーでもそのイメージとサービスを守るために身だしなみや行動に厳しい規律を課しているのと同時に、ビデオなどの様々な手段を通じて、創業者の夢、ディズニーの世界の「魔法」を共有化できるような教育を行っているといいます。

 当たり前の話ですが、マニュアルは結局「手段」に過ぎないのです。しかし、マニュアルを守ることを重視すると、どうしてもマニュアル遵守が目的化してします。ですから、マクドナルドにしても、吉野家にしても、ディズニーにしても、「目的」つまり、会社の達成しようとしている夢であったり、目指すべき姿をしつこいくらい社員やアルバイトに分かってもらうことに腐心しています。

 ルールやマニュアルがあるから「もっといいアイデア」「プラスアルファ」を考えることができるのではないでしょうか。一方で、マニュアルを守ることが目的ならば、マニュアルは「究極のゴール」です。つまり「考えない」「創意工夫がない」のはマニュアルがあるからではないのです。マニュアルを土台、ガイドラインとして目的を達成する喜び、あるいはマニュアルをさらによくして成果を上げる醍醐味を知らないからなのです。

2011年6月13日月曜日

“今と異なる自分”になれる?——最後通告は37歳

 人生があまりうまくいっているとはいえない人にとって、37歳前後というのは非常に重い年齢なのではないかと思う。とすると、近年増えてきたフリーター、ニート、失業者などが37歳を迎えると、けっこうヤバイ状況が生まれるのではないか。

 35歳ならまだまだ若いという気持ちがある。しかし37歳というと、40代がぐっと近づいて見える。人生の折り返し点。人生のやり直しがいよいよきかない年齢になるのである。その時、フリーターや、ニートたちは、なかなか平常心は保てないのではないか。その中から、異常な犯罪に走る人間がでても不思議ではない。

 35歳くらいまでは「今の自分」とは「異なる自分」が将来にあるかも、という希望(妄想)を、本人も持てるし、世間も許容するし、実際に可能でしょう。

 それが37歳を超えると、「将来の自分」は「今の自分」と本質的には変わっていないだろうと、確信的に思わされます。未来が今の延長線上でしか想像できなくなる。そういう年齢です。

 三浦展氏は「人生があまりうまくいってない人にとって」という限定を置いていますが、実はうまくいっている人も同じです。順調な人にとって37歳はまさに「飛躍の年」でしょう。将来トップに上りつめる人は、この年齢あたりで確定します。

 20代や30代前半でいくら「優秀だ」「あいつはトップエリートだ」と言われても、彼らが50歳になった時に本当の勝ち組になれているか、リーダーポジションについているか、不確実です。

 20代だと、学歴や遺伝子、就職タイミング時の好不況やちょっとした巡り合わせが、その人の社会人としての成功・失敗を大きく規定してしまいます。「その人独自の判断や努力」がまだ効いていません。

 でも37歳で勝ち組だったら、その理由は「遺伝子やタイミング」ではなくその人自身がやってきたことで決まりつつあります。だからその後の人生との相関が高くなるのです。負け組もまた同じ。「時代のせいだ!」などと叫んでいれば許されるのは35歳までです。

 この年齢で「最後のレース」に残れない人の多くが、道を変更することになります。一方、この年齢で「勝ちに行く」人たちも積極的に自分の道を変更する必要があります。

 例えば、今までは一生懸命仕事をしていただけの人も、この年齢からは所属する"社内派閥"を決めてリスクをとる必要があるでしょう。選挙に出るなど大きく道を変える人もこのあたりで"踏み切る"必要があります。

 個人生活も同じでしょう。30代前半なら、家庭があっても「本当に人生をともに歩みたい人」とやり直すのは可能です。最近は子どもがいてもそういう判断をする人も多いですよね。でも37歳を超えたら、そういう人と非公式な関係を持つのは可能でも、生活の枠組みを変えるのはとても大変になります。

 これは「配偶者が年をとっているから捨てられない」という話ではありません。子どものこと、親の介護、住宅ローン、自分の健康問題、会社での立場など、個人の感情以外のさまざまな制約が絡まって、人生のかじを大きく切ることに必要なエネルギーが圧倒的に大きくなるからです。だから「今あるもの」を大事にすることが唯一の選択肢となったりします。

判断、6割の情報で十分

 情報は、時間をかけて集めてはいけない。質も、量も、場も普段と異なるのだ。情報のすべてを検証し、全部揃ってから判断するような時間はない。時間をかけてよいのは、応急対応が終わり、復旧から復興に変わっていく段階になってからである。

 まず、6割の情報が得られれば、十分と考える。8割の達成を待っていては手遅れだ。得られる情報量が少ないのだから、必要な情報と不必要な情報の区別がものをいう。ここでも、ファンクションが重要になる。

 情報を効率よく収集するには、7つのポイントを考える。

 【1】何のために集めるか、
 【2】誰が集めるか、
 【3】何を集めるか、
 【4】どこから集めるか、
 【5】どんな方法で集めるか、
 【6】どの程度集めるか、
 【7】いつ集めるかの7つだ。

 特に重要なのは「【1】何のために集めるか」だ。これこそ、ファンクショナル・アプローチで最も大切にしているところである。ファンクションの達成に役立たない活動は、ムダな活動である。情報収集時にも、ファンクションを明確にしておかなければならない。さもなければ、集めることが目的化してしまい、ムダな時間を費やすことになるからだ。「集めてから区別するのではなく、区別してから集めること」なのだ。そのために、「この情報は何のためか」という問いかけを繰り返すことだ。

事業目的見直し

 事業目的の見直しである。事業目的が、今置かれているビジネス環境においてなお、ふさわしいものであるかどうかを見直すのである。これがずれたままだと、ムダなリソースの発見が遅れてしまう。

 「事業目的を見直す」ためには、2つのことを実行する必要がある。それは、「事業目的を明確にする」ことと「事業要求を再検証する」ことである。事業目的は曖昧であってはならない。事業目的は、達成度を定量化できるようになっている必要ある。 例えば「その事業は誰のため?」と問いかけてみる。顧客のためか、会社のためか、開発者自身のためか。ウエイトが数値化されることが大切である。数値化されていないまでも、順位付けは最低限しておくことだ。

 そうしないと、意思決定に迷う。「どれも大切だ、順位づけなどできない」という企業経営者がいるが、それでは生き残れない。

 リソースが潤沢にある時ならまだしも、限られたリソースを配分しなければならない時に、どのようにトレード・オフの関係になっている投資を制御できるのだろうか。判断を間違う原因となる。

ファンクショナル・アプローチ

ファンクショナル・アプローチは、対象の見方を変える思考法である。企業を本質から見直す必要があるときには、製品や部門個別の数字や課題から離れ、本質であるファンクションに立ち返ることが必要だ。

 ファンクションとは、すべての活動の源となる本質のこと。その本質を達成することが企業や個人の目的であり、日々の活動は、そのための手段であると考える。

 ファンクションは、その提供先も明確である必要がある。企業は、ファンクションの提供先から評価を受けて、業績を上げていくからだ。

 つまりファンクションとは「何のため?」「誰のため?」という質問の答えで表現できる。

 この理念の中から、個々のファンクションを取り出す。ファンクションは、「◯◯を××する」と、名詞と他動詞の2語で表現する。

 個別のファンクションは、FASTダイアグラムと呼ぶ図を作りながら、目的と手段に振り分ける。右に置く手段は、左にある「何のため」という問いかけに対応し、左端が最上位ファンクションとなる。逆に、左から右に向かうと、「どうやって」という問いかけに対応する。理念からでは細かな手段までは読み取れないが、実際にはもっと右に大きく展開している。

 平時においては、経営陣は、手段を管理していればいい。手段は、事業や部署ごとに、細かくブレークダウンされているからだ。

 しかし、経営上の大きな判断が必要なときは違う。

 目的を意識する必要がある。判断に迷う時、優先するべきはより左側のファンクションだ。そのファンクションの達成のためには、手段のファンクション群をそっくり入れ替えることもある。最も重要なファンクションからぶれることなく、取るべき行動を見極める力と勇気が、トップには求められる。

2011年6月10日金曜日

いい人生を送るために素晴らしい人脈を築き上げてください

 人脈は一日にして成らず。この言葉を肝に銘じて、人との出会いを大切に、いい関係を築く努力を惜しまないでください。20代のビジネスマンのかたがたは「自分にたいした人脈はない」と嘆く必要はありません。

 こうして人脈の本を書いているわたしだって、20代の頃から今の人脈を手にしていたわけではないのです。20代の今から人脈の重要性を認識して人とのつながりを大事にしていけば、素晴らしい人脈を築きあげることができます。

 30代以上のビジネスマンの人たちも悲観する必要はありません。人生という長い道のりを考えれば、人脈作りをはじめるのに遅すぎるということはないのです。人脈というのは不思議なもので、1人と深く付き合っていくと、自分の人脈とその人の人脈とを持ち寄ることが可能になるので、1+1が2ではなく、3にも4にも無限大になる相乗効果が生まれるものなのです。

 いいビジネスをし、いい人生を送るためには人とのつながりが絶対に不可欠です。本書を活用して、あなたならではの素晴らしい人脈を築き上げてください。

想定外と言わないためのビューチェンジ

 「ここ何年間」も同じ作業を続けるということはすなわち、作業を取り巻く環境(人や仕事、技術、景気、お金など)が、ほとんど変化していないということです。しかし、この「変化なし」を前提に物事を考えるのはリスクが伴います。なぜなら、物事は変化するものだからです。「この状態は変化し得るものだ」という前提で仕事をする場合と、「これからもずっと安定してこの状態が続く」という前提で仕事をする場合では、いざ何かが起きたときの立て直しに雲泥の差が出ます。

 何かが起きた時、「こんなのは想定外だ」と片付けてしまうのは簡単です。しかし、それは思考停止に他なりません。

 この考え方は、キャリアでも同じです。毎日、日々のルーティーンを行いながらも、それが崩れる事態を想定し、「崩れても建て直しやすい体制」を作って実行することが大切です。そのためには「なんとなくビュー」から脱却する方法が有効です。

「なんとなくビュー」から脱却する
(1)「手順の見直し」して脱却する
 「先輩はこうやっていたけれど、もっと効率的な方法はないか」「本当にこの手順が最適なのか」「今やっている仕事は自分に適しているか」「今のスキルを別のところに生かせないか」——手順の見直しは、やがて自分の仕事スタイルを考えることにつながります。自分で考え、自分が作ったという実感がある仕事はモチベーションが上がります。

(2)「目的を見直し」して脱却する
 目的なき仕事は、ただの「作業」でしかありません。この作業は何のためにやっているのか。自分は「何をつくる」ために仕事をしているのか。顧客が本当に望んでいるものは何か。そして、自分は何のために仕事をしているのか。慣れている仕事ほど作業に意識が向いてしまい、作業の目的にまで思考が及ばないものです。「この仕事の目的は何か?」と言われたときに即答できない仕事をなくしましょう。

(3)「リスクの見直し」をして脱却する
 安定して慣れた仕事場では、「これやっといて」「はい」と、なあなあに仕事が進んでしまいます。しかし、慣れているからこそはまる落とし穴もあります。「何も考えずに仕事ができる」「仕事の改善について真剣に考えている人がどこにもいない」——職場にこのような空気が蔓延(まんえん)している場合、それはリスクと考えてよいでしょう。職場の改善に取り組むのも良し、いっそのこと職場環境を変えてみる(異動願いや転職など)のもいいかもしれません。

 現状の状態に甘んじることなく、今あなたが従事している仕事内容やミッション、働いている会社や事業形態などについて、常に見直しをかけて「なんとなくビュー」から抜け出す行動を起こしましょう。

これからの情報システム部の在り方

 新しいテクノロジ・トレンドを迎えるに当たって、考えておくべきテーマがある。それは「これからの情報システム部の在り方」である。

 ここ数年、多くの企業ではIT投資が抑制され、新規の投資がなかなかできない状況 に陥っていたことだろう。だが、情報システム部は、投資水準が回復基調にある今こそ、激変するビジネス環境に柔軟に対応できる、価値ある社内システムを構築するために、大きく変わっていかなければいけない。そのためには、保守への投資割合を減らし、その分のリソースを既存システムの改善や、自社の戦略システムの構築に回していく必要がある。

 言い換えれば、情報システム部員は、「必要なシステムを現場の要求通りに作り、保守・運用を行う」役割から、「情報戦略やシステム企画を考え、より経営に近い視点でITを使いこなす」役割へと変化する必要があるのだ。

 このような時代、情報システム部には、「現場のニーズを聞き、ITで素早く実現するための企画力、実行力」と「エンドユーザー、社内の各部門、社外のサービスプロバイダと連携する調整能力」 の2点が、今まで以上に強く求められるようになるはずだ。クラウドサービスやスマートフォンの導入・運用は、そうした力を象徴するものとなるのではないだろうか。

 そこで本連載では、クラウドサービス、スマートフォンの業務利用に関するポイントを説いていこうと考えている。

時間と場所の制約から解放してくれるスマートフォン

 従来のITシステムはというと、IT資産の更新には莫大な投資が必要であり、最新の技術はなかなか導入できないのが常であった。例えば、1990年代後半から始まったPCの低価格化を受けて、セキュリティ対策、生産性向上、ペーパーレス化といった取り組みのために、「複数人で1台のPCをシェアする」体制から「1人1台」の体制としたものの、いまだに「社内PCの標準OSはWindowsXP、ブラウザはIE6.0、オフィス製品はOffice2000を利用している」というケースは多い。

 一方で、「増え続けるサーバ台数」という問題もあった。業務状況に応じて、社内システムが増えるたびに、サーバの購入・運用管理コストは増加し続けてきた。仮想化技術を使ってサーバを集約する方法もだいぶ浸透はしたが、ハードウェアの数は減っても、管理すべきサーバ台数が減るわけではない。仮想化によってシステム構成が複雑になった分、かえって管理の手間とコストが増えたというケースも珍しくない。

 一般に、IT投資予算の約6割は「既存システムの運用維持」「保守メンテナンス費用」に費やされると言われる。またここ数年、個人情報保護や内部統制、会計制度の変更など、制度変更に伴う必要不可欠の追加投資も増えており、企業内では戦略的なIT投資が思うように実現できていないのが現状なのである。

 すなわち、雑ぱくに言えば、運用管理上のあらゆる問題は、その大半が"自社で持つ"ことに起因しているのだ。その点、自社では所有せず、必要なときに利用できるクラウドサービスは自社で運用する問題を解決できる可能性がある。

 一方、スマートフォンは、どのようなメリットを提供してくれるのだろうか。こちらは各種業務システムを使ったワークスタイルの現状から掘り下げてみよう。

 まず電子メールやグループウェア、文書の電子化といった情報活用については、多くの企業に定着していると見ていいだろう。申請、経費清算、タイムレポートといった定型業務も電子化が進み、一般的に利用されている。財務会計、受発注、在庫管理、販売管理、資産管理、人事給与、顧客管理といった基幹系についても、大企業での導入は一巡した。現在は、中小企業にもERPの導入が進んでいる。

 では、こうした中、オフィスワーカーの生産性は本当に向上しているのだろうか?——この点を考えると、筆者としては素直にうなずくことはできない。例えば、ちょっと空いた時間に業務とは無関係のネットサーフィンを行ったり、多くのメール配信サービスに加入したりして、それらのチェックに没頭している、といったことはないだろうか?

 もちろん、この高度情報化社会において、目の前にインターネットがありながら、情報を仕入れることなく、ただひたすら業務をこなす、といった働き方は現実的ではない。よって、筆者はそうした就業中の情報収集を一概に否定するわけではないが、「オフィスワーカーは、自席のPCで作業可能な定型業務は、極力減らすことが重要なのではないか」と思うのである。定型業務を減らした時間を使って、顧客や取引先への訪問回数を増やし、コミュニケーションを増やし、業務に関するさまざまなアナログ情報を集め、整理することにより、新しいアイデアが生まれ、より"創造的な"業務を遂行可能になるのではないだろうか?

 むろん、これは理想に過ぎない。だが、この理想と現状を比べて浮かび上がってくるのは、「今の業務システムの多くは、利用場所や利用時間に多くの制約がある」ということだ。例えば、メール処理や単純な報告書の作成、在庫確認、顧客管理などの定型業務は、必ずしも自席で行う必要性はないはずである。そうであれば、定型業務はちょっとした移動時間や、空き時間に行えば良い。まさしくこの点が業務効率化の大きなポイントになると考えるのである。

 とすると、やはり場所や時間の制約から開放し、より時間を有効に活用できるようになる点がスマートフォンの最大の利点と言える。実際、"時間と場所の制約からの解放"に着目してその活用シーンを考えてみると、あらゆる可能性が瞬時に思い浮かぶ。

 例えば、サプライチェーンマネジメントにおける調達、製造、流通、販売といった管理業務、CRMにおける顧客管理などだ。これらは、あらゆる情報が生まれる"現場"で行った方が業務効率が上がるのは自明である。加えて、今夏、東日本では節電対策としてのシフト勤務や在宅勤務にも注目が集まるだろう。そうしたワークスタイルの変革も、「人の機動性を高めてくれるスマートフォン」を用いれば、一気に現実味を帯びてくるのである。

2011年6月9日木曜日

消費は「不要不急」でなく「必要緊急」

 消費は、行動経済学であり、心理経済学でもある。合理的でなくても、人の心は動き、消費のボタンが押される。
 消費活性化のレバーは決して少なくない。防災関連商品や自家発電といった「備える消費」や、寄付金消費や被災地産消費など、気持ちに訴えかける「情緒消費」は消費者の心にしっかりと根付き始めた。また、保有から利用への流れや、省エネ、安全性への関心の高まりも、変化の芽として顕在化している。企業は、消費者の変質を見極めつつ、「消費する意味合い」を積極的に伝えることで、「本当は買いたい」消費者の背中を押せるはずだ。
 また、不道徳感も含めた消費マインド解凍には、より広い視点からの呼び掛けも欲しいところだ。「不要不急」はすっかり耳慣れた言葉になったが、経済再生は「必要緊急」である。元気な人が足を引っ張ってはならない。一人ひとりの力を巨大な火の玉として、再生は初めて前に進むことを、官民を上げて訴えかけなければならない。
 政府にも頑張って欲しい。消費者が最も気にしている「将来不安」の解消には、福祉国家のグランドデザインが不可欠である。その上で、相続税/贈与税の時限免除や資産課税など、「貯蓄から消費へ」を促す策はいくらもある。こんなときは、国内旅行ポイントや賞与のレジャークーポン払いなど、時限施策も総動員で、あとで「やりすぎた」と批判が出るようなら「してやったり」ではないのか。
 「使わないと損するよ」「胸を張って使えばいいよ」。消費者は、時に北風の、時に太陽のささやきを求めている。

リーダーシップ

 組織がうまく回らない時、自分たちのやりたいことができない時、うまくいかないジレンマが組織の空気に漂った時、必ずと言っていいほど、フォロワーはリーダー批判を開始する。「リーダーシップがない」と。
・明確なビジョンがない
・口ばかりで何もやろうとしない
・決断が遅い
・人望がない

 リーダーシップとは、そこにいるメンバー(フォロワー)がやりがいを感じられなかったり、熱狂できなかったり、楽しめなかったりした時、なぜこんなにもうまくいかないんだろうという思いに駆られた時に、初めて問題となるテーマであり、ネガティブな感情が蔓延した時にしか注目を浴びないものなのだ。

 「組織運営においてリーダーの及ぼす影響力は10%程度で、残りの90%は、部下であるフォロワーの人々の力が左右する」
 こう説いたのは、米カーネギーメロン大学のロバート・ケリー教授である。

 フォロワーのいないリーダーはこの世に存在しない。リーダーの下には必ずやフォロワーがいて、フォロワーがロボットでもない限り、そこにはフォロワーの行動や心の有様が組織のパフォーマンスの係数として存在する。

 名リーダーがいるように、名フォロワーもいる。その両者がタッグを組んだ時に初めて、リーダーシップが発揮されるというわけだ。

 確かに名リーダーと呼ばれる人の傍らには、その人を支え続けた名脇役とも言うべき名フォロワーがいるように思う。

 ホンダの創業者である本田宗一郎氏には、常に同氏を立ててマスコミからは一切身を隠し、同社の財務並びに販売を一手に取り仕切っていた藤沢武夫氏の存在があった。松下電器産業(現パナソニック)の創業者である松下幸之助氏にも、中尾哲二郎氏という右腕のエンジニアがいたと言われている。

 藤沢さんも、中尾さんもトップにはなっていない。藤沢さんは、社長の本田さんとともに副社長を退き、中尾さんも副社長にはなったものの、社長にはならなかった。いわば名ナンバー2として、リーダーのパートナーであり続けた存在だった。

優秀なフォロワーに選ばれるのがリーダーの仕事、リーダー選びの基準となるのが、次の3点だ
(1)明確なビジョン
(2)ビジョン達成への誠実さ
(3)批判や意見に耳を傾ける度量

優秀なフォロワーに出会うための"術" は、次の三つ
 1つ目は、年明けの仕事始めに、今年の目標を全員にプレゼンすると同時に、1人ひとりがじっくり読めるように手紙にして渡す。
 2つ目は、週2回、部長・課長クラスから7人程度を会議室に集め、つまみで酒を酌み交わしながら意見交換をする。できるだけ工場にも顔を出し、従業員たちと無駄話をする。
 3つ目は、"ではの神"にはならないようにする。「〜では、ホニャララと言っている」とか、「オッペケペー理論では……」などと、「〜では」を多用しない。自分の言葉を使って、自分の会社のメンバーに伝わる表現を自ら考えて発言するようにしているというのだ。

 社長という座にとどまるのではなく、自分からフォロワーに近づく努力を惜しまない。ビジョンがちゃんと伝わるように、伝わったか、と常に内省を繰り返す。フォロワーが耳を傾けるために、時にはお酒の力を借りてみたり。現場で空気を共に吸い、現場のフォロワーの声を無駄話の中に見いだそうとする。

「簡潔に話す」ための六つのポイント

(1)依頼事項を最初に簡潔に話す
(2)相手が知っていることとの比較や比喩表現を使い、簡潔に話す
(3)納得できる理由を簡潔に話す
(4)原因や本質を簡潔に話す
(5)スケジュールを簡潔に話す
(6)自信をもって簡潔に話す(弱々しく話さない)

(1)依頼事項を最初に簡潔に話す

 チェックリストの1.「何の話?」「報告? 相談? 連絡?」「私はどうすればいいの?」「俺がやることあるの?」に対応するポイントである。

 自分はいったい何をすればいいのか、何が望まれているのかを知りたい。あなたの話を聞く相手はまず、こう思うのが普通だろう。

 説明する際は冒頭で「報告したいのですが」「意見収集のためです」「ご決断いただきたいのですが」といった具合に、相手にやってほしいことを明確にしておくとよい。筆者の組織では実際、このようなルールを定めている。

(2)相手が知っていることとの比較や比喩表現を使い、簡潔に話す

 チェックリストの2.「簡単に言うと、どういうことなの?」「分かるように説明してくれない?」に対応するポイントである。

 専門的な内容を説明する際に、新しい概念で理解するのが難しかったりすると、説明がつい冗長になってしまう。この場合は、相手の知っていることに置き換えるとよい。

 以前のIT関連の動向には通じているが最近の事情にはやや疎い人に、「クラウドコンピューティングとは何か」を説明するとする。そうした場合は、ホスティングやハウジング、ASP(アプリケーション・サービス・プロバイダー)といった既存の概念と比較して説明すれば、相手は理解しやすくなる。

(3)納得できる理由を簡潔に話す

 チェックリストの3.「それはなぜ?」「どうしてそうなるの?」に対応するポイントである。こう聞かれるのは、相手がその理由を理解できていないからだ。相手に説明するときは、「なぜそうなのか」を相手に納得してもらえる内容を盛り込む必要がある。

 クラウドコンピューティングについて話すのであれば、「なぜ必要なのか、普及が進んでいるのか」の理由を盛り込む必要がある。クラウドなら機器更改の手間を低減できる、保守要員を手配しなくて済む、運用手順を考えなくていいなどが挙げられる。筆者の組織でも、理由に関する説明が甘い場合、再説明することとしている。

(4)原因や本質を簡潔に話す

 チェックリストの6.「何が原因なの?」「どこが問題なの?」に対応するポイントである。原因や本質をきちんと探究していないために、相手に納得してもらえる説明ができていないと、こうした質問を受けることになる。

 この場合は原因や本質とその理由をズバリ、ひと言で説明する必要がある。それを可能にするには当然、原因や本質をあらかじめ十分に理解しておかなければならない。

(5)スケジュールを簡潔に話す

 チェックリストの7. 「いつまでにやるの?」「スケジュール感をどう考えている?」に対応するポイントである。

 上長は、部下やチームメンバーの仕事を管理する立場にある。担当者が思っている以上に、スケジュールを重視するケースが多い。それで仕事がうまく進んでいるか、何か問題があるかを見ているのである。

 このため、スケジュール感をあらかじめ簡潔に説明しておかないと、ダメだしを受けることになる。筆者の組織でも、スケジュールを示さない人は、本気でこの仕事に取り組んでいないと評価される。

(6)自信をもって簡潔に話す

 チェックリストの9.「これでうまくいくの?」「それで大丈夫?」に対応するポイントである。説明者の説明が弱々しかったり、自信がなさそうだったりするときに、こうした質問が出てくる。

 この場合はくどくど説明するよりも、「○○だから大丈夫です」「他の会社で事例があります」といった具合に気持ちを込めて言い切ることが大切だ。そうすれば相手は安心感を持つようになる。

トヨタと米ITベンダーの提携に見る「提携」と「受託」の落差

 トヨタ自動車がマイクロソフトやセールスフォース・ドットコムと相次いで提携----この話を聞いた時、日米のITベンダーの彼我の差をまたもや思い知らされた。「トヨタさんに付いていきます」とは、グローバル展開に向けての某大手国産メーカーのトップのコメントだが、「提携」と「受託」、この差はあまりにも大きい。

 トヨタとマイクロソフトの提携は、プラグインハイブリッド車(PHV)や電気自動車(EV)向けのテレマティクスなどの基盤にWindows Azureを使おうというもの。片やセールスフォースとの提携は、セールスフォースのChatterを使ってSNSを提供し、自動車にもつぶやかせるという今風の話だ。まさにクラウドやSNSといったITの最先端を、PHVやEVといった自動車の最先端に結びつける"戦略提携"だ。

 実は、こうした日本の大手企業と米国のITベンダーとの戦略提携は、過去にも何度もあった。例えば1990年代前半には、NTTがマイクロソフトやシリコンバレーのベンチャー企業と提携を大々的に発表している。通信のフルデジタル化、あるいはIT化を急ぐNTTにとって、日の出の勢いの米国のITベンダーとの提携は大きな意味があった。

 その大きな意味を書く前に、もう少し別の話をする。NTTと提携したベンチャー企業はジェネラルマジックという企業で、今で言うスマートフォンを使ってオンラインショッピングなどを行えるようにする基盤ソフトを開発していた。インターネットの普及の前だから、当時はものすごく新しかった。だから、ソニーもジェネラルマジックと提携して、その"スマートフォン"を造ろうとした。

 では、なぜ日本の大手企業は、米国のITベンダーと提携しようとするのか。当たり前だが、最先端で影響力のある製品やサービス、技術を持っているからである。要は"尖っている"からだ。90年代にデジタル化を急いでいたNTTやソニーにとって、ITで尖っている企業との提携は価値があった。その提携で成果が出るかどうかは別にして、提携自体がマーケティング上で絶大な効果があった。

 NTTの戦略提携で言えば、マイクロソフトとの提携は雲散霧消し、ジェネラルマジックは企業そのものが消滅した。それでも、NTTとしてはOKだったのだ。ジェネラルマジックとの提携発表直後に、NTTの幹部が「メディアに大きく取り上げられたので、これで元は完全に取れた」と話していたのを、私は今でも鮮明に覚えている。

 さて、トヨタの場合はどうだろうか。マイクロソフトは以前に比べ随分"丸く"なったし、セールスフォースもクラウドベンダーとしては"地味"だから、今回の提携はより実利的なのかもしれない。ただ、若者の自動車離れに悩むトヨタにとって、米国のITベンダーのもたらす夢のある壮大なビジョンを共有することは、やはりマーケティング、トヨタブランドの向上の観点から極めて意味のあることだろう。

 そんなわけだから、日本のITベンダーにとって大事なお客さんである日本の大手企業は、米国のITベンダーと提携する。当然すぎるが、尖ったものをもたない日本のITベンダーとは提携しない。まあ細かな提携はあるだろうが、経営トップ同士が大掛かりな記者会見で見得を切るような提携はあり得ず、ただ粛々とシステム開発などの仕事を発注するのみである。

 まあ、日本のITベンダーはマーケティングが最大の弱点だから、無理に大言壮語せず顧客の後を付いていけば、それでよいのかもしれない。ただ、自動車関連の部品メーカーは今では立派なグローバル企業。受託・受け身の代名詞だった印刷会社も、今や出版・書店業界を糾合しデジタルメディアのリーディング企業になろうとしている。ITベンダーだって大志を抱けば、何かできるはずだが。

2011年6月8日水曜日

どうすれば部下からより多くの自発的な発言や行動を引き出せるか

リーダーとして方向性を示すことも大事だけれど、いかにメンバーに考えさせるかということも大変重要であると認識した。しかし、こちらが問いかけても部下はなかなか思うように言葉を発してくれない。自分が積極的に話しかけても、いまひとつの反応しか示さない。そんな部下の様子は、上司自身だけでなく部署のだれもが察知し、気にするものです。チーム全体の士気を高めるのに、けっしてプラスに作用しません。
部下からより多くの自発的な発言や行動を引き出せるには、合わせ技で話しやすい環境を整える必要です。
・どんな風に質問に応えてほしいかを、あらかじめ伝える
・答えがただ1つでなく、いくつもあるような質問をする
・質問に応えてほしいときは、質問をさせる

 この3つをうまく組み合わせれば、かなり相手の発言量や積極性は増すと思います。

 1つ目は、「どのように質問に応えてほしいかを、あらかじめ伝えておく」ということです。
 コミュニケーションは、「セッティング」が何より大事だといえます。「セッティング」というのは「仕込み」のことです。
 相手がどんな状態であったとしても、部下にいきなり話しかけて、切れ味鋭い質問を投げかけ、相手に話をさせる。これは相当難しい。出たとこ勝負でコトが済むなら楽ですが、現実にはなかなかそうはいきません。
 性格、体調、都合や立場、それにその瞬間どんなことを考えているか。相手の状態は千差万別です。もちろん、相手の思考を引き出すことを目指して、問いを効果的に活用できればよいのですが、いきなり相手の心の中に入り込むような質問を繰り出すのは簡単ではありません。
 そこで大切になるのがセッティングです。セッティングといっても手間のかかる準備は要りません。要は、質問する前に自分が求めていることを伝えてしまうわけです。
「これからいくつか質問をしたいんだけれど、まとまらなくても思いつく言葉を挙げるだけでいいから、話してほしい」
 ぺらぺらと緊張感なく話せる人は別として、たいていは、自分の話がうまくまとまるか、きちんとしているかを気にします。ですからその負荷を下げるのが先決です。
「どんな言い方でも、どんなにつまらないことでもいいから、まとまりなくぱらぱらとでいいから話していただけますか」。コーチングのセッションでも、あらかじめこのように伝えておくかどうかで、相手の発言量は驚くほど変わります。
 逆に、饒舌になりやすく、何を言いたいのか分からなくなるような部下の場合は、あらかじめ次のように伝えておきます。
「これから質問をいくつかしたいのだが、いいかな。こちらが理解をするために必要なことは適宜、尋ねるので、まずは結論から言ってほしい。途中で割って入ることもあるかもしれないけれど、それは理解を早めたいからで、遮ることが目的ではないので、覚えておいてほしい」
 要するに、こちらがどんな対話を繰り広げたいのか、その要望をあらかじめ伝えておくわけです。自分が意図することを相手がイメージできるように伝えれば、相手はそのイメージに沿って会話してくる可能性が高まります。

 2つ目は、「考えたり話したりするのが楽しくなるような質問をする」ということです。
「1+1はいくつかですか?」と聞かれるのと、「答えが2になる計算式には、どんなものがあるでしょう?」と聞かれるのでは、ずいぶん勝手が違います。
「1+1」の答えは1つしかありません。たった1つの正解しかないという前提で質問をされると、部下の側には心的なプレッシャーがかかります。
「営業でいちばん大事なことは何だと思う?」
 このような質問を、「答えは1つ、俺が20年かけて到達した正解を言ってみろ」というような表情でされれば、部下は相当なプレッシャーを感じます。「上司の思っているとおりに答えられなかったらどうしよう、きっと怒られる」と身構えてしてしまう。
「上司の期待している答えを察しなければならない」。あるいは「これ以上、怒られたくない」。はたまた「相手にばかだと思われたくない」。そんな感情を抱かせるような質問ばかりしていては、部下は答えることに、楽しみではなく、恐れを抱くようになります。
 そうではなく後者の「答えが2になる計算式は」と聞くパターンで接してみる。

「営業で大事なことには、どんなことがあると思う?」
 さらに、次のような言葉も加えてみます。
「いろんな解があると思う」
「正解はないが、大事なのは君に考えてもらうことだ」
「どんなセリフでもいいからまずは口に出してみよう」
 このような言い方で問いを投げかけることができれば、相手は質問の中に自分の価値観や経験を投影することができ、楽しくなります。
 そもそも質問は、投げかけられた人がそこに自分の価値観や経験を投影し、自分をつまびらかにしていくプロセスで、受けて答えて楽しいものであるべきなのです。
「一生に一度でいいから行ってみたい世界の場所ってどこ?」
「もし生まれ変わることができるとして、どんな職業にもつけるとしたら何をやってみたい?」
「あなたってどんな人なの?」
 こうした質問に応えるとき、人は自分の嗜好性、価値観、ものの見方を総動員して、自分の中から言葉を紡ぎ出そうとします。その瞬間、"改めて自分を知るような感覚"が起きます。つまり、この手の質問は、相手の自己発見を導き出す道具となるのです。
 同様に、自由に答えてもらうことを前提にして、「営業で一番大事なことにはどんなことがあると思う?」と投げかける質問は、部下にとって、自分の営業に対する思いや考えを結実させる格好の手段となるはずです。部下がこうした質問を嫌うことはありません。

 3つ目のポイントは、「質問に応えてほしいときは、質問させる」ということです。
 質問の場では、質問する側が対話の主導権を握り、される側は話に付いていきます。対話をコントロールするのは、どちらかというと質問する側になります。対して、質問される側は受け身になりがちで、つい防御態勢に入りやすいのです。
 受け身でいる相手に対しては、当然、自発的で、率直で、正直なアウトプットは望めません。
 コミュニケーションの姿勢が能動的になれば、逆に質問された時も、積極的に話すようになります。
 コーチングをしていても、受け答えがどこか他人ごとのようで、質問されるから話しているといった様子がうかがえるクライアントには、立場を逆転させて質問をしてもらうことがあります。
 自分の中の興味や関心、好奇心を立ち上げなければ、たいした質問はできません。質問する側に回ってもらうことが、その人の会話に対する姿勢を自ずと能動的にさせるのです。

広告の未来を語るために重要な7つのキーワード

 シンディ氏が語るこれからの広告の未来を語るために重要な7つのキーワードです。
・Goodness
・Transparency
・Action
・Agency
・Money
・Production
・Magic

 簡単に日本語で解説をすると下記のようなイメージでしょう。

・Goodness(善であること)
 いきなり善といわれてしまうと、宗教の話のような印象を受ける方も多いかもしれませんが、ここでシンディ氏が伝えたかったのは広告を嫌われたり批判されたり存在では無く、良いものにしようというメッセージでしょう。

 「Make Good Advertising ⇒ Make Advertising Good」

 「良い広告を作る」という概念から「広告自体を良いものにする」という概念への変化を提示していましたが、広告自体の位置づけや定義を根底から変える必要があるということでしょう。

・Transparency(透明性)
 前述のGoodnessにも通じますが、もはやマーケティングで嘘はつけない。新しい時代のマーケティングは、完璧な透明性のもと存在するということがこのキーワードに込められたメッセージです。とかく広告表現においては製品やサービスの特徴を必要以上に誇張してしまったり、ときには弱点を隠そうとしたりしがちです。個人が自ら情報を発信するソーシャルメディア時代においては、隠蔽行為は無駄であり、完璧な透明性が求められる時代が到来したと言えるでしょう。


・Action(行動)
 7つのキーワードの中で特に重きが置かれていたのがこのキーワードです。

 従来のブランディングが、どちらかというとイメージやメッセージに重きが置かれていたのに対し、シンディ氏はこれからのブランディングは「行動」することによって構築されていくと断言しています。行動によるブランディングと言われると、ピンとこない方もいるでしょう。震災後の企業の支援や物品提供などの「行動」が様々な反響を呼び起こしたケースをイメージすれば分かりやすいと思います。

 「マイクロアクション」という表現も使われていましたが、行動は1つひとつが決して大きい必要はありません。ツイッターのつぶやきや、マイクロペイメントに見られるように、小さな行動の積み重ねが大きな結果をもたらす時代である、だからこそ「行動」が重要なのだというのがシンディ氏のメッセージでした。

・Agency(代理店)
 エージェンシー、いわゆる代理店の役割も大きく変化する必要がある、とシンディ氏は説きます。インターネットやソーシャルメディアの普及により、マーケティングのあり方は大きく変わろうとしており、従来の広告のビジネスモデルも変化が求められています。

 こうした時代だからこそ、エージェンシーは旧来のビジネスモデルにしがみつくのではなく、これまでのビジネスのあり方を自ら破壊し、ゼロから作り直すぐらいのことをしなければならない。それによって改めてエージェンシーの重要性も増すというのがこのキーワードに込められたメッセージです。

・Money(お金)
 これはまさに文字通りお金の話ですが、シンディ氏はお金を稼ぐことの重要性を改めて強調しています。従来のビジネスモデルでお金を稼ぐことが難しくなっているからといって、その重要性が無くなっているわけではありません。従来のモデルで収益を上げにくくなったそのときこそ、自分にしか生み出せない価値は何かを突き詰め、信じ、それを強化していくこと。そして何より収益を上げることにこだわるべきだというのがシンディ氏のメッセージです。

・Production(生産)
 単純に生産と訳してしまうと、何かの製品やサービスを生産するイメージを受けてしまうかもしれませんね。シンディ氏が強調していたのは前半のキーワードにも含まれている、とにかく行動して生み出していくことの重要性です。アイデアを考えるだけでは意味が無く、いかにそのアイデアを実践し、実際の行動に移していくことができるか、そうした人材や組織の重要性も強調していました。

・Magic(魔法)
 文字通り「魔法」の話です。マスマーケティングの全盛期、広告というのは顧客の心を動かして、製品やサービスの売り上げを拡大できるまさに魔法使いのような存在でした。それが今では自信を失い、魔法が使えなくなっている。その魔法の力をもう一度取り戻せ、というのがこのキーワードに込められたメッセージです。


 現在、ソーシャルメディアは広告業界において流行語のようにもてはやされ、半面、恐れられています。ただ、ソーシャルメディアで展開されているのは結局、人間の行動であること、重要なのは人間の心理を解明することであり、それは本来広告会社が得意としてきた分野ではないか。広告代理店出身であるシンディ氏ならではのエールのこもったメッセージでした。

クレジット・アキュミレーション理論=リーダーシップ

 リーダーシップとは「How to do(やり方)」ではなく「How to Be(あり方)」である。つまり、テクニックは通用しない。良きリーダーになろうとするならば、その前に、良き人間にならなければならない。そのためには、人として鍛錬を積み、徳を1つずつ積み上げていかなければならない。そうでなければ部下には通じない。テクニックだけでは底の浅さはすぐに見抜かれてしまうのだ。

 リーダー道を1歩から積み上げるにはどうしたらいいのだろうか。そのヒントは、1970年代に社会心理学者のEPホランダーが提唱した「Credit Accumulation Theory (信頼蓄積理論、クレジット・アキュミレーション理論)」に求めることができるだろう。

 それまでのリーダーシップ論がリーダーの資質や行動特性など、リーダー個人にフォーカスを当てていたのに対し、ホランダーはリーダーと部下との関係性に着目した。つまり、リーダーと部下との間に信頼関係が蓄積されていれば、リーダーはその部下に対してリーダーシップ(影響力)を発揮しやすく、信頼関係がなければリーダーシップを発揮することはできない、と提唱したのだ。

 部下の可能性を信じ、部下に任せて、主体性を引き出す。その考え方自体はなんら間違ったものではない。しかし、それは「心の底から」信じている、ということが前提だ。

 すべきことは「いかに正確な指令を出すか」ではなく、「いかに部下から信頼される上司になるか」であったのだ。部下から信頼される上司になることを怠ったままで、「正しい」指示命令を「論理的」に「説明」し続けたのだ。これでは部下に愛想を尽かされて当然だ。

 テクニックに溺れず、ムリにガマンをせず。しかし、心の底から部下のことを考える。業績達成への上司からのプレッシャーもあるが、そこにフォーカスし、自分をぶらさない。さらに、自分は未熟な新参者であると心して、テクニックではなく、人として信頼されるよう努力する。

うつ病を理解し、乗り越える

うつ病は深い精神的苦痛であり、人の健康をむしばみ、活力をそぎ、食事や睡眠をとる力を奪ってしまう
うつ病は、思考や感情、肉体の健康に大きな影響を与える
子供や青年、お年寄りもうつ病になる可能性があるが、うつ病患者の大部分は25歳から65歳の女性である
うつ病の3大要因は「過去の辛い経験、生きるための堅苦しいルール、社会からの多大なストレス」である
ある研究結果によると、生化学的不均衡が、うつ病の原因であると示されている
薬物治療により、うつ病の身体症状を和らげることができる
一時的に症状を緩和するには、運動、メディテーション、社会との交流を行うこと
カウンセラーあるいはセラピストは、うつ病の主要原因を突き止める手助けができる
うつ病から回復するためには、小さなことから始めること
自分の思考パターンを認識し、否定的な考えには「言葉を返す」こと

この要約書から学べること

うつ病の症状に早期に気付く方法
うつ病の治療法とは?
うつ病の原因および回復するための方法とは?

 うつ病とは単に気分が悪い事とは異なります。誰でも、時によっては気分が悪くなることはあります。しかし、本当の臨床的うつ病は、気分の悪い状態が常に、そして長期間続いた時に起こります。このレベルのうつ病になると、考え方、自分自身や生活のあらゆる物事に対する感じ方が影響を受けます。そして、最も深刻な症状は、自分は二度と回復しないのではないかと思い込んでしまうことです。

 ベイツ医師は、薬物治療と心理療法を使用して回復を図る総体的アプローチを推奨しています。また、自分のネガティブな思考パターンを認識しそれに対応することや、ストレスを減らすこと、そして日記を書いたり、小さな目標を立てて取り組んだりすることなど、シンプルな対処法を紹介しています。

 現代人であれば、だれもが発症する可能性のある心の病「うつ病」。気分が落ち込み、生きるエネルギーが失われて、身体のあちこちに不調をきたす病気です。

 恐ろしいことに、日本人の約20%が、うつ病を経験するといわれていますが、そのうち治療を受けている人は、ほんのわずかであるという調査結果が出ています。

 「うつ病」の原因はストレスにあるとされていますが、現代において誰でもがそれなりにストレスを抱えていることは間違いありません。しかし、なぜ発症する人とそうでない人がいるのでしょうか? うつ病についての見解がかなり広まってきたとはいっても、症状の軽いうちは周りからは普通に見えるために、単なる怠けだとか甘えだと誤解さるケースも少なくありません。また、本人が「うつ病」と気付いていない場合もあるといいます。

絶望感を乗り越える

 うつ病にかかっている人は、何も変わるものは無いと思っています。このような絶望感は自己達成的であり自己破滅的なものです。しかし、絶望感に悩まされていても、それを乗り越える方法があります。自分が抱える問題の巨大さに圧倒されるのではなく、問題を対処できる段階に分けて考えて下さい。

 一度に講じる手段は1つの小さなものにし、それに集中して下さい。期待は抑えめにすることで、より成功する可能性が上がります。小さな成功を積み重ねることで、自分は要らない存在であるという感情と闘うことができます。

 また、過去の楽しかった出来ごとを思い出し、同じことがもう一度起きる様子を想像して下さい。そして、自分は価値のある存在であるという考えや、自分が苦しむのは当然のことではないという気持ちを育てて下さい。最後に、人生には何が起こるか分からないことを覚えておいて下さい。幸運を掴む機会があるということを信じて下さい。

 もし、自分自身が、うつ病だと思ったら、まずは今抱えている問題を少しずつ捉え、解決していくことが重要です。それにより、少しずつ自信を取り戻すことが可能になります。そのためには生活環境の中に、よき理解者の支えも必要だと思います。

うつ病に打ち勝つ

 ある特定の活動を行うことで、一時的にでも憂うつな気持ちから解放されると気付いている人もいるでしょう。そういった活動には、散歩、音楽鑑賞、親しい友人と時間を過ごす、ペットと遊ぶ、休暇、睡眠、宗教に安らぎを求める、などが挙げられます。

 しかし、このようなことをしても悲しみを和らげることができなかった場合、臨床的うつ病を乗り越えるための身体的、精神的、感情的、および対人的な手法を一体化させたアプローチを取る必要があります。うつ病の症状は人さまざまであるため、人によってより適切な手法とそうでない手法がある場合があります。

 もし、身体の物理的性質の不均衡がうつ病の原因である場合、薬物治療が効果を発揮する可能性があります。薬物治療は一部の身体的症状を和らげる効果があるため、うつ病の内在する感情的要因を見つけることができます。薬物治療だけでうつ病を治療することができると考えている医師もいますが、より総体的なアプローチが必要だと感じている医師もいます。

 専門家の大部分は、薬物治療と心理療法を組み合わせる手法が、うつ病を乗り越えるためには最も効果的だという考えに賛同しています。薬物治療に加え、運動、食事制限、メディテーション、睡眠などを行うことでうつ病の物理的影響を抑えることができます。

 カウンセラーや資格を持ったセラピストは、うつ病の中心的理由を克服する手助けをすることができます。専門家のサポートのもと、うつ病の根本原因となっていると考えられる辛い記憶や経験を安全に探る事ができます。ある患者は、「私と同じ気持ちを味わっている人に、希望はあると伝えたいのです。

 あなたは他の皆と同じだけ素晴らしく、それを証明してあげなければならない相手は、あなた自身なのです。今あなたが必要とするサポートを受けて下さい」と記しています。

 うつ病を乗り越えるための総体的アプローチには次のような要素があります。

総合的なアプローチについて

 ・ストレスを減らす:スケジュールを少し変えるだけで、ストレスの程度を大きく変えることができる場合がよくある。大切でない約束をキャンセルしたり、休みを取ったり、毎日のストレスを解消するための助けを求めたりすること

 ・否定的な考えに対抗する:悲観的な思考のパターンは徐々に成長していく。まずはこのパターンに気付き、対抗すること

 ・治療日記をつける:考えや感情を日記に記録することは、治療の役に立つ

ここでは具体的には、うつ病の改善方法について語られています。まずは精神に負担をかけないようにすること。そして身体的異常は、時に薬物治療も有効ということです。いずれにしても、この項目は、うつ病を理解するうえにおいて、非常に参考になるはずです。

うつ病とは?

人はよく、気分が落ち込んでいると訴えることがあります。また、人は誰しも時々、憂うつな気持ちになります。特に、職を失ったり可愛がっていたペットを失くしたりするなど、ストレスがかかる経験をすると気を落としてしまいます。しかし、人は通常、悲しみの期間を経た後、家族や友人の支えによって立ち直ります。愛する人を失くしたことに深く悲しむことは、確かに胸が張り裂けそうになりますが、臨床的うつ病とは異なるものです。臨床的うつ病には次のような特徴があります。

臨床的うつ病の特徴

 ・悲しい気分が和らがない

 ・気力や活力が感じられない

 ・集中力や記憶力が上手く働かない

 ・以前は楽しめていた活動への興味が失われた

 ・よく眠れず、食欲に変化がある

 うつ病は、単なる気持ちの落ち込みとは異なります。通常は気持ちが落ち込んでも、楽しい活動に参加したり、周りの人からの支えがあったりすれば人は立ち直る事ができます。しかし、うつ病にかかった人は孤独を感じ、友人や家族から離れてしまうことがよくあります。また、自己嫌悪を覚え、自分の人生は二度と良くならないと信じ込んでしまうのです。

 誰でも、気分が落ち込む事はあります。ただ、その原因がはっきりしており、それを改善できる何かが明確になっていれば、それはうつ病ではありません。逆に原因不明のまま、改善する気力をも失ってしまった時、それはうつ病を発症した可能性があるのかもしれません。
うつ病の一般的兆候

 うつ病とは重度の精神的苦痛であり、患者の身体的健康感を奪うものです。また、食事や睡眠のパターンを妨害し、活力を奪います。うつ病患者の大部分には、考え方、感じ方、行動、そして健康状態に何らかの形で症状が表れます。そして、このような症状は互いに関連しています。1つの症状が現れると、他の症状が続いて現れるのです。次のような症状が考えられます。

うつ病の兆候として現れる症状

 ・思考:うつ病患者にとって、思考は敵である。自己批判、絶望、消極性が絶え間なくうずまいている

 ・感情:恐れ、罪の意識、不安、自信喪失、心配などは、うつ病の一般的な兆候である

 ・身体的症状:睡眠障害、食欲の変化、性欲の減退はすべてうつ病の症状である可能性がある

 ・行動:子供や青年はうつ病になると、混乱を招くような行動を取ったりするなど、行動障害が表れることがある。また、大人は怒りっぽくなったり、注意散漫になったり、無気力になったりすることがあり、曖昧な身体的不満を持ったりする場合がある。さらに、うつ病の苦しみを和らげようとして、麻薬やアルコールに手を出してしまう人もいる

 気持ちの落ち込みと同時に、身体、感情、そして行動にまで異常が現れるのがうつ病の特徴です。

うつ病にはさまざまな形がある

 うつ病はさまざまな形で表れます。人によっては、長期的低度のうつ病である、気分変調になることがあります。気分変調は多くの場合、気が付きません。深刻なうつ病は、強い症状や時によっては自殺をしたいと思う気持が少なくとも2週間は続きます。また、双極性障害(そううつ病)は、高揚感を覚えたり、過活動になったりする状態と深刻なうつ状態の間を行ったり来たりする症状を指します。

 うつ病は、子供、青年、男性を含む誰もがかかる可能性のあるものですが、患者の大部分は25才から65歳の女性です。研究によると女性は男性よりもうつ病にかかりやすいことが分かっています。

 症状や、年齢性別である程度、うつ病の発症の形態が分かってきているということは興味深い事です。とはいえ、自分にはまったく関係ないと考えないことが大切です。

3つの要因

 うつ病の主な要因には「幼いころの辛い経験、生きるための厳しいルール、社会からのストレス」の3つが挙げられます。人は、幼少期に自己イメージを作り出します。無関心な親、あるいは虐待する親、親の厳しい支配的な振る舞い、あるいは愛情の欠如によって、子供は自己イメージを作る事ができなくなります。

 また、親の死など辛い経験からのトラウマも、もしその時子供が適切なケアや対応を受けられなかった場合、将来的にうつ病の原因になる可能性があります。

 人は、自分達の人生に上手く対処し、コントロールする手段として「生きるためのルール」を作ります。多くの場合、このようなルールは帰属意識や高い自尊心を育てます。しかし、もしそのルールが厳し過ぎる場合、きちんと守れないとうつ病になってしまう可能性があります。

 例えば、もし「自分に自信を持つには、誰からも好かれる人間にならなければならない」というルールを持っているとしたら、自分はとても好かれていると感じられた時のみ、成功したと感じることができます。逆に、好かれていると感じられなければ、自信を失くし、うつ病にかかりやすくなってしまいます。

 社会的環境もまた、うつ病の原因になりえます。粗末な住居、低所得、孤独感、支援を受けられないひとり親家庭など、社会的要素はストレスを与えます。しかし、研究によると、辛い時期に頼りになる親しい友人が1人でもいれば、誰も支えてくれる人がいない人と比べて、4倍うつ病にかかりにくいという結果が出ています。

 多くの研究で、脳内の生化学的変化がうつ病を引き起こすという結果が出ています。この変化には、遺伝的変化と進化的変化があります。遺伝理論は、遺伝的にうつ病にかかりやすい人がいることを主張しています。また、進化理論は、脳はある特定の刺激に対し、ある特別の形で反応を示すとしています。

 例えば、人は危険を感じた時、不安を覚えます。生物学的要因によってうつ病が発症した際、医師は特定の治療薬を処方し、神経科学的不安定を和らげる事ができます。

 うつ病の発症原因は、はっきりしているわけではありませんが、強いストレスを受け続けると発症するといわれています。考えてみれば、どんなに硬い物質でも、長期的に強い力がかかり続ければ壊れてしまいます。同じように、心にストレスという力が加わった結果、精神に異常をきたしてしまうのではないでしょうか。

仕事の最大の報酬は「次の仕事機会」

 仕事をした時、それがもたらす報酬とは何でしょうか? 「報酬」という言葉を辞書で調べてみると「労働に対する謝礼のお金や品物」と出てきます。確かに、報酬の第一義はカネやモノです。しかし、仕事が、それを成し遂げた者に対して与えてくれるのは、そうした目に見えるものだけではなさそうです。

 仕事を成し遂げることによって、私たちは能力も上がるし、充実感も得る。それと同時に、さまざまな人とのネットワークも広がる。そして、また次の仕事チャンスを得ることにもつながる。そう考えると、仕事の報酬には目に見えないさまざまなものがあります。今回は、仕事の報酬にどのようなものがあるか考えてみたいと思います。

目に見える報酬

1.金銭

 金銭的な報酬としては、給料やボーナスがあります。会社によってはストックオプションという株の購入権利もあるでしょう。働く者にとって、お金は生活するために不可欠なものであり、報酬として最重要なものの1つに違いありません。

2.昇進/昇格・名誉

 よい仕事をすれば、組織の中ではそれ相応の職位や立場が与えられます。職位が上がれば、自動的に仕事の権限が増し、仕事の範囲や自由度が広がるでしょうし、昇給もあるので結果的には金銭報酬にも反映されます。また、際立った仕事成果を出せば表彰されたり、名誉を与えられたりします。

3.仕事そのもの(行為・成果物)

 モノづくりにせよ、サービスにせよ、自分がいま行っている仕事という行為自体、あるいは自らが生み出した成果物は、かけがえのない報酬です。プロスポーツ選手は、その試合に選出されてプレーできること自体がすでに報酬ですし、自分の趣味を仕事にして生計を立てられる人は、その仕事自体がすでに報酬です。

4.人脈・他からの信頼・他からの感謝

 1つの仕事を終えた後には、協力し合った社内外の人たちのネットワークができます。もし、あなたが良い仕事をすれば、彼らからの信頼も得るでしょう。現在のビジネス社会では、たいていの仕事は自分単独でできない場合が多いですから、こうした人のネットワークは貴重な財産になります。

 また、よい仕事はほかから感謝されます。お客さまから発せられる「ありがとう」の言葉はうれしいものです。

目に見えない報酬

 さて、以上の報酬は、自分の外側にあって目に見えやすいものです。しかし、報酬には目に見えにくい、自分の内面に蓄積されるものもあります。

5.能力習得・成長感・自信

 仕事は「学習の場」でもあります。1つの仕事を達成するには、実に多くのことを学ばなくてはなりませんが、達成の後には能力を体得した自分ができあがります。また、良い仕事をして自分を振り返ると「ああ、大人になったな」とか「一皮むけたな」といった精神的成長を感じることができます。

 その仕事が困難であればあるほど、充実感や自信も大きくなります。こうした気持ちに値段がつけられるわけではありませんが、大変貴重なものです。会社とは、給料をもらいながらこうした能力と成長を身に付けられるわけですから、実にありがたい場所なのかもしれません。

6.安心感・深い休息・希望・思い出

 人はこの世で何もしていないと不安になる。人は、社会と何らかの形でつながり、帰属し、貢献をしたいと願うものです。米国の心理学者エイブラハム・マズローが「社会的欲求」という言葉で表現した通りです。仕事をする———たとえそれがよい成果をもたらしても、もたらさなくても、人は、仕事をすること自体で安心感を得ることができます。

 また、良い仕事をした後の休息は心地よいものです。そして、良い仕事は未来には希望を与え、過去には思い出を残してくれます。

7.機会

 さて、仕事の報酬として6つを挙げましたが、忘れてはならない報酬がもう1つあります。——それは「次の仕事の機会」です。

 次の仕事の機会という報酬は、上の2〜6番めの報酬(つまり金銭を除く報酬)が組み合わさって生まれ出てくるものです。

 機会は非常に大事です。なぜなら、次の仕事を得れば、またそこからさまざまな報酬が得られるからです。そうしてまた、次の機会が得られる……。つまり、機会という報酬は、未来の自分を作ってくれる拡大再生産回路の"元手"あるいは"種"になるものです。「良い仕事」は、次の「良い仕事」を生み出す仕組みを本質的に内在しています。

 報酬としてのお金は生活維持のためには大事です。しかし、金のみあっても能力や成長、人脈を"買う"ことはできませんし、ましてや次の良い仕事機会を買うこともできません。そうした意味で、金は1回きりのものです。

年収額を追うと「悪い回路」に入る

 「年収アップの転職を実現する!」———人材紹介会社の広告コピーには、こうした文字がよく目に付きます。給料がなかなか上がっていかない時代にあって、確かに年収アップは魅惑的です。

 ですが、現職を「給料が安いからダメだ」とか、「年収を上げるためにここいらで転職でも」とか、そういった金銭的な単一尺度で、長く付き合う仕事と会社を評価するのは賢明ではありません。

 もし、あなたが金銭報酬的なもののみにほだされて、ある職を選び、その職を実際行ってみた結果、面白みもなく、自分は何の能力向上もせず、ましてや次の挑戦機会も与えなかったとしたら、それは「悪い仕事」です。「悪い仕事」は労役であり、それこそ、その我慢料として、報酬はせめていい金額をもらわねばやってられない、という「悪い回路」に陥ります。

 私たちは、金銭的報酬以外に吟味すべきことがたくさんあります。そして優先順位を付けねばなりません。第一に考えるべきは、何といっても「仕事そのもの」です。そして、その周辺にはどんな「機会」があるかです。特に20代、30代前半は能力や人脈を蓄積することが決定的に重要になる時期です。より多くの「良い仕事機会」(=チャレンジングなプロジェクト)に加わっていくことが、確実なキャリアの発展回路を作り出します。

 もちろん、不当に安い給料で我慢することはありません。労働者の権利として正当な報酬は手にすべきです(従業員の経済的幸福を考えない会社、私欲に走る経営者は、早晩消えていきますが)。

 真に満足でき、自分を開いてくれる職業人生のために、「まず年収額ありき」のキャリアではなく、「良い仕事機会」に恵まれるキャリアを意識してください。良い仕事機会には、良い人たちも集まってきます。そして価値ある仲間と、価値ある仕事をさせてもらい、さまざまに成長していく。そして気づいたら納得のいく年収が得られていた———それで十分ではありませんか。

2011年6月7日火曜日

クラウドならではの用途の探求

昨年あたりから本格的に「クラウドをどのように自社で活用するか」といった「クラウド戦略」の策定に着手した企業が多くなってきていますが、そうした企業の多くは、ハードウェアやソフトウェア、維持管理などを含めた「コスト削減」を目的にしています。

クラウドの本質が「規模の経済」にあることを考えれば、クラウド活用の第一歩として、コスト削減を目的としてきたのは自然な流れだと思います。企業経営の立場からすれば、リーマンショック以降の景気の落ち込みもあり、コスト削減の切り札として、クラウドに期待した部分も多分にあったのでしょう。企業の方から私に寄せられた相談を見ても、「クラウドを上手に活用すれば、コスト削減につながるのではないか」という期待から、トップダウンでクラウドの導入を検討し始めた企業が多かったように思います。

しかし、クラウド活用の第一歩がコスト削減だとすると、そろそろ次の一手として、「クラウドならではの使い方」や「クラウドを使うことで劇的な生産性の向上につながるような用途」を考える時期に差し掛かってきたのではないかと思っています。

具体的には、スマートフォンやタブレット端末などのモバイルとクラウドの連携、あるいは複数のサーバーを用いた大規模データの分散並列処理などです。

まず、前者のモバイルとクラウドですが、これは非常に親和性が高い組み合わせです。既に、クラウドの導入を契機に、スマートフォンやタブレット端末を導入し、社員のワークスタイルの革新を実現しようという企業が出てきています。

例えば、中古車売買大手のガリバー・インターナショナルでは、Google Appsの全社導入に加えて、iPhone、iPadの導入も進めています。同社では、従来、外出先の営業担当者がメールをチェックするには、店舗に戻るしかありませんでした。しかし、現在ではiPhoneやiPadを使うことで、どこにいてもクラウド上のメールをチェックし、顧客サービスの向上を図るとともに、時間を有効に活用するというワークスタイルへの転換をめざしています。これと同時に、顧客先を訪問する営業担当者はiPadに中古車画像を表示し、販促活動にも役立てています。ノートPCよりも起動が早いiPadを使うことで、スムーズな提案活動が可能になったということです。

一方、後者の複数のサーバーを活用した分散並列処理の活用事例としては、日本最大の料理レシピ検索サイトである「クックパッド」が有名です。同社では、ユーザーが料理レシピの検索のために入力したキーワードの検索ログの解析にクラウドを活用していますが、解析対象としているのは1年分のログであり、そのデータ量は膨大です。このため、社内のデータベースサーバーを利用して、この処理を実行した場合、7,000時間はかかると見積もられました。しかし、クラウドを活用し、50台のサーバーを同時に立ち上げ、分散処理のフレームワークである「Hadoop(ハドゥープ)」を利用したところ、わずか30時間足らずで処理が完了したということです。このHadoopとは、簡単にいえば1台のサーバーでは時間のかかる処理を、複数のサーバーで分散して処理させることで、高速化を図ろうとするコンセプトに基づき設計されたソフトウェアです。

このように、いち早くクラウドの活用を始めた企業の中には、コスト削減に加えて、クラウドの特性を生かしたメリットを享受している企業も出てきています。日本では、クラウドというとコスト削減というメリットに目が行きがちですが、クラウドの活用で先を行く米国の場合は、コスト削減だけではなく、この分散処理のようなクラウドの特性を生かしたメリットにも注目が集まっています。

「クラウドに期待するメリット」を聞いた米国企業を対象に実施したアンケート調査結果と日本企業を対象に実施した調査結果を比較すると、「サーバーやストレージなどを運用管理する負荷軽減」「サーバーやストレージなどのハードウェアのコスト削減」が上位2位である点は変わりません。しかし、日本に比べると、米国ではややその比率は下がっています。また、日米の大きな違いとして、日本では6.4%でしかなかった「大規模なIT リソースを活用した分散処理」が米国では18.1%と3倍近くも多く支持されている点が挙げられます。

この分散処理は、先に説明したクックパッドのようなネット企業を中心に日本でも活用が始まりつつありますが、それ以外の一般的な企業においても、日本企業に多いとされるバッチ処理への適用が検討され始めています。劇的な生産性の向上につながる可能性が高い、このような新たなクラウドの活用法はさらなるクラウドの普及を後押しすることになるでしょう。

クラウドの現状課題

(1)セキュリティー
 自社の外にデータを預けるパブリック・クラウドの場合、プロバイダーがどのようなセキュリティー対策を講じているのかが問題になります。例えば、前編で説明したとおり、クラウドは通常、複数の顧客でサーバーなどのシステム環境を共有する「マルチテナント方式」で運営されています。このため、「ほかの顧客のデータと確実に分離されているのか」「第三者からのアクセスに対してどのように保護されているのか」といった点は気になるところでしょう。極端なケースを想定すれば、競合他社のデータと隣り合わせでデータが保存されている可能性もないとはいえないからです。

ただし、最近ではプロバイダーもクラウドの利用阻害要因が「セキュリティー」にあることは、十分承知しており、セキュリティー対策に力を入れています。このため、セキュリティーに問題があるというよりは、ユーザーから見た場合、「自社のセキュリティーポリシーに準じているかどうか」がポイントになってきています。また、そもそも、セキュリティー対策に「絶対安全」はないため、専任のセキュリティー担当者がいない中小企業であれば、「クラウドプロバイダーに任せてしまう方が安全」という考え方もできるかもしれません。

(2)データの保管場所が分からない
 海外事業者が提供するパブリック・クラウドでは、データを分割して、複数の場所に保管しているため、データの所在が特定されない場合があります。データの物理的な所在を意識せずに気軽に利用できるというのがクラウドの特徴である半面、この特徴がコンプライアンス上、問題になるケースがあることは意識しておく必要があるでしょう。

(3)パフォーマンス
 品質保証がないインターネットを利用することが前提のパブリック・クラウドでは、ある程度、ネットワークの遅延を受け入れる覚悟が必要になります。このため、リアルタイム性を要求するアプリケーションや厳密なトランザクションの一貫性が求められるアプリケーションの利用は避けた方が賢明といえるでしょう。

特に、日本のユーザーが米国のデータセンターを利用するクラウドサービスにアクセスする場合、パフォーマンスが悪かったり、処理が重く感じられたりするケースがあります。このため、そのパフォーマンスが許容範囲にあるかどうか、事前に検証を行う必要があります。

クラウドの本質は「規模の経済」

企業が現在、クラウドに寄せる期待として最も大きいのはコスト削減です。仮に「ITの所有から利用へ」を実現したところで、ITコストの削減が期待できないのであれば、ここまでクラウドが注目されることはなかったのではないでしょうか。

 

Amazon EC2」の場合、1時間当たり、日本円にして10円を切る料金で仮想サーバーが利用できますし、追いかける国産プロバイダーもAmazon EC2に近い料金でサービスの提供を開始しています。私は、この利用料金の安さこそが、これまでの類似サービスとは違う、クラウドの本質ではないかと思っています。

 

低料金を実現できる理由としては、以前と比較して、サーバーの価格性能比が劇的に向上したことやハードディスクなどストレージの料金が大きく下がったことが挙げられます。しかし、一番大きいのは、サービスの提供者側で「規模の経済」が働くようになったことです。これには、さまざまな要因があります。

 

技術的には仮想化技術の登場によって、複数ユーザーが一つのシステムを共有するマルチテナント化が可能となったことが大きな要因です。以前は1ユーザーが1台の物理サーバーを専有していたのに対して、仮想化技術を使えば、1台の物理サーバーを論理的に複数のサーバーに分割して使うことができます。物理サーバーのスペックにもよりますが、現在では1台の物理サーバーを2台〜10台程度の仮想サーバーに分割し、複数ユーザーで利用することが可能です。

 

また、サーバーなどの運用管理にも規模の経済は働きます。例えば、マイクロソフトでは、1人のサーバー管理者が5,000 台ものサーバーの管理を行っているといいます。サーバーを1カ所に集約し、それを少ない人数で集中して管理するようにすれば、運用管理効率は格段に向上するというわけです。

 

ビジネス的な面では、(1)ボリュームディスカウントが適用されるように、大量のサーバーやストレージを一括調達し、調達コストを下げる (2)グローバルでビジネスを展開する事業者の場合、世界各地の時差を活用し、サーバーの利用率を平準化する──ということを行っています。

 

2)については、例えば、クラウド利用のピークタイムが10時〜17時だとした場合、仮に日米で同じサーバーを使用しているとすると、時差のある日本と米国ではピークタイムがずれることになります。このため、サーバーが使用されずに遊んでいる時間がほとんどなくなり、サーバーの効率的な利用が可能となります。

 

こうした規模の経済によって得られる収益率の向上は、ユーザーの利用料金に反映されます。現在のクラウドサービスの料金が以前に比べて非常に安価になったのは、規模の経済の威力を端的に示すものだといえるでしょう。

 

では、誰でも利用可能なパブリック・クラウドに対して、利用者を自社内、あるいは自社のグループ企業内の社員に限定したプライベート・クラウドの場合はどうでしょうか。プライベート・クラウドを、パブリック・クラウドの規模を縮小したものと考えれば、当然、得られるスケールメリットはパブリック・クラウドにかないません。しかし、従来、各部門単位など個別にサーバーを用意していた場合に比べれば、全社でサーバーのリソースを共有するプライベート・クラウドは、やはり規模の経済が働き、コスト面でのメリットが出てきます。

 

このように、クラウドには数多くのメリットがありますが、もちろん万能ではありません。後編では、現在指摘されているクラウドの主な課題を整理するとともに、企業が利用する際の留意点などをまとめていきます。

 

クラウドのメリット

1)初期投資が不要
 パブリック・クラウドの利用者はサーバーやストレージなどのハードウェアを購入・所有しなくても、経費で利用できるようになります。つまり、IT資産を固定資産から運用コストへと転換することができ、IT資産のオフバランス化が図れることになります。

2)システムの運用管理が不要
 クラウドでは、インターネットの向こう側に情報システムが存在することになります。従って、システムを構成する各機器の運用管理は全て、インターネットの向こう側でサービスプロバイダーが実施することになります。このため、利用者が自らサーバーなどの運用管理作業を行う必要はありません。
 ソフトウェアのプログラムに不具合(バグ)があった場合やバージョンアップが必要な場合も、プロバイダー側が全ての作業を行うため、利用者側は何も行う必要がありません。

3)すぐにシステムが使える
 クラウドでは、既にプロバイダー側で稼働しているシステムを利用するため、利用者は申し込みから短時間でシステムの利用が可能になります。例えば、 IaaS(Infrastructure as a Service)の代表的なサービスであるAmazon EC2(Elastic Compute Cloud)を利用する場合、有効なクレジットカードさえあれば、30分程度でサーバーを立ち上げることができます。

4)拡張性、柔軟性が高い
 IaaSであれば、仮想サーバーの追加や削除、SaaS(Software as a Service)であれば、人数の追加や削減が迅速かつ容易に行えます。このため、仮に事業が急激に拡大した場合にも、柔軟に対応することができます。

5)一時的な利用が可能
 従量制課金のため、必要な時だけ使い、必要がなくなればすぐに利用をやめてしまうという使い方が可能です。例えば、期間限定のキャンペーンサイトの構築などの場合には大いに有効でしょう。

役割分担と統合

組織とはそもそも個人ではできないことを達成するための仕組みです。次の3点に要約されます
(1)役割分担
(2)役割の調整、統合
(3)ルール

役割の分担
 組織の中では、個人の役割が決まっていなくてはなりません。皆が同じことをしていては、組織としての価値はないわけですから、それぞれの個人の能力や経験と組織の目的をかんがみて「分担」が決まります。
 その分担を「統合」する第一段階として、組織構造ができます。いわゆる組織図をイメージしていただければよいでしょう。それぞれの役割を考えて、どのようにまとめたら最も相乗効果があり、組織力が上がるかを考えて、「部門」「課」などができます。組織構造を考える「軸」は数えるほどしかありません。例外はあるかもしれませんが、基本的には次の4つ、またはその組み合わせ(マトリックスなどと呼ばれます)です。
(1)機能別(マーケティング、製造、経理、人事等)
(2)商品あるいは事業別
(3)顧客別(消費者、法人、官公庁等)
(4)地域別(国内では東日本、西日本、海外ではアメリカ、アジア等)

役割の調整、統合
 役割分担や組織図を変えても問題が解決しない本質的な問題は、結局組織力とは「部門間の統合」にカギがあるということです。多くの企業において、「縦割りの弊害」「風通しが悪い」といった問題が、情報や資源の退蔵を生み、対策の遅れや機会の逸失につながります。なんだかんだ言って、人間は帰属意識が高く、部門を分けると、他部門にライバル意識を持つからです。ランダムにチーム分けをしただけで「自分たち」「他人」という意識が生まれるという心理学の実験結果もあるほどです。
 つまり、組織力を発揮していくためには、「どう分けるか」も大切ですが、「どう結び付けるか」がそれ以上に大切だということです(ちなみに、マギル大学のミンツバーグ教授が指摘するように、戦略についても、分析だけではなく、その分析をどうつなぎ合わせて1枚の絵にするかが大切なのです)。この結び付け方、統合がなおざりになっていれば、どんなに組織を変えても、あるいはどんなに優れた人材を採用しても、組織の力が高まることはありません。

「想定外」とトップの役割

 計画、準備に「完全」はありません。計画や準備にコストがかさんでそもそも何もできないのならまさに計画倒れです。「危機に際しては、リーダーは行動するために考えるのではなく、考えるために行動する必要がある」とはミシガン大学のカール・ワイク教授の言葉です。彼は「詳細な計画を作ると、すべてわかったと勘違いしやすい」とも指摘しています。もちろん入念な計画、準備は必要ですが、過剰に計画に期待したり、それですべてできた気になってはいけないのです。不測の事態は起こるものなのです。

 実際、企業の活動においては「想定外」が起こることは日常茶飯事です。その原因は今回のような自然災害だけでなく、競争相手の新技術かもしれませんし、取引先の約束違反かもしれません。あるいは為替であったり、認可であったり、ブームの急速な終焉かもしれません。「想定外」なのですから、準備ができていない。どのような対策があるのか、何が一番良いのか、そんなことがよくわからない局面において、トップは対策を決断しなくてはならないのです。

 時々、「トップの決断とは、100対0なんていうことはなく、51対49で決めることだ」などとおっしゃる方がいますが、これは相当楽をしてきた方でしょう。「51対49」で決めることなんて簡単です。もう答えは出ているわけですから。実際には、そもそも何対何などと数値化できない、あるいは短期的には60対40だけれども、将来的にはそれが逆になりそうだといった「答えのない」あるいは「答えがいくつもある」問題に対して決断をしなくてはならないのです。

 当然ですが、答えがないのですから間違えるかもしれない。つまり、自分の答え如何によって、多くの損失が出たり、被害をこうむる人たちが出てきたりするかもしれないのです。そうなれば、当然責められるし、罪人扱いされるでしょう。せっかくこれまで成功し、順調に昇進を遂げて社長に上り詰めたのに、こんなところでミソをつけるのは嫌だ、もっと情報を集めて確実に決めたい、ほかの会社はどうしている……。こんなことを言うトップを持った組織は、多くの場合地獄行きです。

 難しい決断を、胃をきりきりさせて下さなくてはならないからこそトップの給料は高いのであり、だからトップなのです。それこそが、「運転手と副社長の差よりも大きい」といわれる社長と副社長の差であり、分析をして施策を上申すればよい参謀との違いです。

 「直観」も「勘」も経営の世界で表舞台に出ることは多くありません。科学や分析を重んじる立場からすれば、胡散臭いこと、根拠のないことのように感じられるからでしょう。しかし、不確実な局面で意思決定をしなくてはならないトップは、もう一度自分の「直観」を見直す必要があります。なぜなら、直観とは、これまでの経験が無意識の中でつながり、現場から得られるかぎられた情報から意味を嗅ぎ取る触覚でもあるからです。しかし、そこには明確なロジックはありません。誰かに問われれば「勘だ」と答えるしかないものです。

 一方で、情報量と意思決定の質は正比例しないことも最近の研究が明らかにしています。「オーバーロード(overload)」という言葉があるように、ある時点までは正比例するのですが、情報が「ありすぎる」と人はその情報を消化できず、かえって意思決定の質が下がってしまうのです。「簡単な問題は情報分析をもとに合理的に、複雑な問題は直観に従え」というのが研究者の指摘です。専門家が20種類の紅茶のランク付けをしたとします。全くの素人が、直観でランク付けをするとかなり専門家と近い結果になり、「その理由を書くことにする」と、その結果はとんでもないものになるのだそうです。

 そのためには、外にばかり情報を求め右往左往するのではなく、普段から自分の組織のことを知ることはもちろん、自分の胸に手を当ててその直観を信じる勇気を持たねばなりません。直観を信じたから、必ず成功するとは限りません。しかし、「ほかの人が何を言うか」「嫌われたくない」「どこかにもっといい情報があるのではないか」と考えている限り、幸運の女神がほほ笑むこともないでしょう。

組織力とは何か

 そもそも組織が存在するのは、個人ではできない仕事や目的を達成するためです。ここでは組織力を「組織の目的をより効果的または効率的に達成する力」としておきます。バーナードは組織を協力のシステム(cooperative system)と定義し、大きな石を動かすことを例として挙げています。石を動かすことであれば、目的はきわめて明確で、10人集まれば、5人の時の2倍の力が出るでしょう。しかし、現実には、公共機関にしろ、企業にしろ、目的はもっと複雑ですし、個人の仕事や担当する役割も多岐にわたっています。ですから、10人の組織が、5人の組織の2倍の力を持つとは限りません。組織のマネジメント次第で、3倍になることもあれば、1.5倍かそれ以下になることもあるのです。

 組織力を高めるとは、目的達成のために、そこに集まる多様な個人の力を結集し、個人の力の総和以上の力を発揮することです。そのためには、個人1人ひとりの役割がはっきりと認識され、その役割が全力で果たされなくてはなりません。役割とは、機能(例:生産、マーケティング、セールス)だけでなく、階層によっても異なります。

 気をつけなくてはならないのは、個人個人に明確に役割が分担され、その役割が果たされる=組織力が高い、とは必ずしもならないことです。「役割を明確にする」ことは大切ですが、組織に必要な機能、仕事のすべてを明確にすることはできません。環境が変われば、これまでにない仕事も当然でてきます。「私の仕事ではないからやらない」というのであれば、幸運の女神の前髪をつかむことは決してできないでしょう。そして、組織力は「分担」された個人の役割が、組織として「統合」されて初めて発揮できるものです。1つひとつの歯車が、ぶんぶん空回りしているのではなく、目的達成に向けてかみ合ってこそ、個人ではできない大きな仕事ができるのです。

 その意味で、組織力とは「個人個人の役割がきちんと果たされること」だけではなく、役割としてはっきり規定できない隙間が埋められ、さらには「個人個人の仕事を組織の力として結びつける」ことがどうしても必要になります。後に何度も触れますが、組織において「分業」「専門」という話はよく聞きますが、「結び付ける」「統合」という点については十分な注意が払われていないのではないかと思います。「力を合わせる」ことや「チームプレー」の大切さはいろいろなところで指摘されていますが、だから組織として何が必要かという議論にはならず、個人の心構えの問題として済ませられていないでしょうか。

2011年6月6日月曜日

お客様の「目的達成ストーリー」を売る

 営業成果は、量×質、掛け算で表されます。
 横軸に商談数(量)をとり、横軸に営業の受注確率(質)をとると、営業の成果はその積、つまり面積で表すことができます。営業の成果を大きくしたければ、一商談当たりの受注確率を高めるか、同じ受注確率であれば、商談数を増やすことです。

 営業成果を最大化するためには、限られた時間を効率的な活動で量を増やすか、限られた商談を有効性ある活動で着実に決めていく、という方法の掛け合わせが必要です。以上を意識して、営業成果を最大化するための、基本編から応用編に展開する「営業力5段階強化法」を説明していきます。

【STEP1:効率的に活動量を増やす】

 まず最初に手がけるのは、効率的な営業のための営業計画です。

 「計画が苦手な営業マンに優秀な営業マンはいない」と言われます。行き当たりばったりの営業、お客様に振り回されている営業、その日の朝になってアポを取っている営業、達成シナリオもなく積み上げている営業マンに、業績が常に上位の営業マンはいません。

 ほとんどの業種の営業活動は、3カ月で「営業戦略」、1カ月で「営業戦術」、週間単位で「行動計画」を組み立てます。重要なアポを取るのは、その週ではなく2週間前からアプローチすれば、先方の予定が詰まっていない段階で、こちらのペースで計画が立てられ、準備も余裕ができ、活動効率が上がります。

 次は、実営業時間を増やすことです。すべての受注はお客様との接点である実営業時間(電話、メール含む)から生まれます。私が調べてきた実営業時間の平均は、25%くらいです。10時間働いているとしたら150分です。中身を商談内容だけに絞ると、もっと少なくなるでしょう。実は移動時間が全体の30%に及びます。

 効果的な対策は2つ。毎日の実営業時間を20%、30分増やす努力をすること(理論的には成果も2割増えるはず)。もう1つは、できるだけ自分が訪問しなくても商談が進む方法を考えること。

 矛盾するようですが、訪問するということは移動時間も消費します。必要事項はメールや郵送で済ませ、訪問する以上は、準備を十分に整え、中身の濃い複数の要件をこなす努力をするべきです。訪問しているから営業している気になるのは、間違いです。お客様の時間も消費しているからです。有効性ある実営業時間が成果に結び付くからです。

【STEP2:強化すべき顧客を明確にする】

 営業戦略は集中することです。どの商品に集中するか、どのお客さまに集中するか、ランチェスター戦略でも常識になっている通り、密度が成果を生みます。訪問しやすいお客様を選んではいけません。売り上げをアップするためにこちらが重要なお客様は、相手にとっては重要でない場合が多いです。有効性ある重要顧客を営業計画の中で明確にすべきです。

 80:20の法則にあるように、上位20%のお客様で売上の80%が決まっている。この上位20%のお客様をどのように選ぶか。「ABC分析」での現在の上位顧客と将来のために育てる「深耕顧客」が含まれているはずです。

 私は3カ月に1回、顧客分類を行い、格付けを変えて、優先順位や訪問頻度を変えていました。営業は狩猟型で刈り取るべき活動と、農耕型でじっくり育てるべき活動があります。優秀な営業マンはその見極めが鋭く、長期にわたりお客様との関係を温めたり、ここぞという時にお客様の近くにいたりします。こういう目利きを持ち、懐が深い営業マンが安定的な業績を上げ続けます。

【STEP3:顧客ニーズを把握する】

 初期の段階で営業マンの価値を決めるのは何か。差別化、付加価値を生む、お客さまからの期待値を決めるものは何か——。それは情報です。

 情報の切り口はいくらでもあります。まずはお客様の個人情報、会社情報、業界情報、お客様の顧客情報、競合の情報(実に重要です)、我々の商品情報など、顧客情報ファイルなどに定型化されているでしょうか。ヒアリングシートが用意されているからといって、一からお客さまに聞き出したら、ダメ営業マンの烙印を押されます。大切なのは、いかに事前情報を集めるか、その情報をもとに仮説を立てられるか、お客様の欲しい情報を準備できるかです。

 私がリクルート営業マン時代、「訪問する時には手ぶらで行ってはいけない」という原則がありました。「お土産」を持つ。これはモノではありません。お客様の関心を引きつける情報のお土産です。「今日のお土産は何?」が営業同行する時の決まり文句でした。情報武装で営業マンの戦闘力が決まるのです。

 次の段階で、顧客ニーズを把握します。顧客ニーズは2つあります。顕在ニーズと潜在ニーズ。顕在ニーズは既に表面化しており、求める商品サービス、企画・仕様も明確になっています。この局面では提案の余地も少なく、差別化しづらい状態です。相見積もりで安いところに流れるという利益が生まれない商売になります。ですから、まだ表面化していない、潜在需要・欲求の段階でのニーズに対応することが有効性の高い営業です。

 顕在ニーズは質問すれば具体的に知ることができますが、この情報は競合と差別化できません。お客様の胸の内にある、まだ解決方法が具体的でない状態で、推測して、仮説を立てて打診していきます。この段階で共有できれば、同じ目的を持って、ともに課題解決するパートナーとなるでしょう。真の利益は顕在ニーズではなく、潜在ニーズを満たした時に生まれるのです。

【STEP4:企画力・提案力を高める】

 提案力の源泉は何か。プレゼンテーションスキルでしょうか、商品説明力でしょうか、お分かりだと思います。顧客理解力です。提案力の評価の中核は「的を射た企画」です。

 では、的を射るためには、どうしたらよいでしょうか。そうです、前ステップでお伝えした情報収集が最大のカギです。その適切な質と量の情報を基に企画を考える際、最も重要なアプローチは「目的から入ること」です。セリングポイント=売り方ではなく、バイイングポイント=買う理由が重要なのです。

 何が目的なのか、何を満たすためのニーズなのか、結果として何を得たいのか。お客様は商品が欲しいのではないのです。商品を得た結果の課題解決、満足感、使いやすさ、便利さ、かっこ良さ、優越感、などなど。商品はそのことを満たすための手段に過ぎません。すなわち、目的を達成するためなら、提供する商品とは異なる提案でも聞いてくれるはずです。時には、予算などあってない場合があります。より大きな満足が得られるなら、予算は投資に変わり、楽しい買い物になるのです。

 従って、営業マンは「商品説明をしてはいけません」。商品の利点や優れている点、一般論ではなく、お客さまにとっての利益、すなわち目的が達成するイメージを強く印象付けるのです。

 これを事例営業と言います。営業している商品サービスの効能を使用現場のリアリティある表現ができる営業は強いです。商品サービスを売るのではなく、「お客様の目的達成のストーリー」を売るのが有効です。そうすると金銭的価値や機能的価値を超えて、情緒的価値まで付加価値となって、買っていただけます。

【STEP5:お客様との関係を強化する】

 「お客様の目的達成のストーリー」を売っているあなたは、そのお客様の喜びを共有しているでしょうか。

 営業マンは売ることが目的になりがちで、契約を結ぶと関心が薄れますが、お客様が満足するのは買った時ではなく、納品され、実際に使用して期待以上であった時に満足します。お客様と長い関係を持って、囲い込むビジネス、リピートや紹介でつないでいくビジネスなどは、目的達成をお客様と共に喜ぶスタンスかどうかが、お客様との関係性、継続性、業績維持に大きく影響し、そこに着目することが長い目では効率的なのです。

 お客様と強い信頼関係を結んでいくためには、売るためにお客様をファンにするのではなく、まずあなた自身がお客様のファンになって、喜びを共有するのです。そうすることで、本当のお客様の立場に立った仮説や提案が浮かんでくるものです。

 そういう関係作りが、業者をパートナーへと発展させていく力になります。最後に業者とパートナーの違いを考えてみましょう。


 営業マンとしての価値でもあり、楽しさでもあるのが、「お客様のお役に立って、喜んでいただけること」。やはり仕事をしている以上、売り上げも重要ですが、自分の存在感を示せる、個人として認めてもらえる営業マンになりたいと願うでしょう。

 あなたの部下である営業マンはお客様からどのレベルを期待されているでしょうか。実は、その期待はお客様が決めるのではなく、営業マンのスタンスが決めるのです。営業マンはお客様から「格付け」されています。どの程度、期待してよい営業マンか、値踏みされていることを忘れてはいけません。

 お客様が本当に悩んでいる課題は何でしょうか。お客様をよく観察し、自ら広く情報収集し、仮説を立てて、お客様にぶつけてみる。課題解決力を高めていく。真剣に考え抜いた提案なら、衝突しても主張すべきです。営業マンの考える深さに応じて、お客様も深い話を戻してくれます。お客様を絞り込んで、パートナーとなるべきお客様を創ってください。営業リーダーの方は部下と一緒に考え、貴重な経験を体験させてください。その経験の積み重ねが、競合と差別化された、どこでも通用するプロフェッショナル営業マンを育成していくことになるのです。

Thumbs.dbファイルを作成しないようにする

Windows XPWindows Server 2003の場合

 画像や写真データの縮小イメージを保存するThumbs.dbファイルを作成させないようにするには、エクスプローラのオプションを変更する。このためには、エクスプローラの[ツール]−[フォルダ オプション]メニューを実行し、フォルダ・オプション・ダイアログで[表示]タブを選択する。 ここにある[縮小版をキャッシュしない]のチェック・ボックスをオンにすれば、以後、Thumbs.dbファイルは作成されなくなる、だが既存のThumbs.dbが自動的に削除されることはないので、必要ならば検索機能で探し出し、すべて削除しておけばよいだろう。

 ところで、このファイルが利用できないと、縮小表示のたびに画像/写真ファイルの内容を読み出す必要があるため、表示に時間がかかるようになる。またネットワーク上のフォルダの場合はトラフィックも多くなるので、そのデメリットを十分考えた上で、設定していただきたい

Windows VistaWindows Server 2008Windows 7Windows Server 2008 R2の場合

 Windows Vista以降のOSでもThumbs.dbファイルは利用されているが、その管理方法はWindows XPWindows Server 2003とは少し異なっている。デフォルトではThumbs.dbファイルはユーザー・フォルダの下の特定の場所(%LOCALAPPDATA%\Microsoft\Windows\Explorer)にまとめて置かれ、各フォルダの下には作成されない(1)。しかし設定によってはThumbs.dbが作成されることがあるし、このファイルが原因でフォルダの削除ができなくなる(Thumbs.dbが使用中で削除できないというエラーが表示される)など、トラブルとなることも少なくない。

1 この縮小表示やキャッシュ・ファイルの扱いはWindows VistaSP未適用版とSP1適用版で異なるなど、いくらか仕様変更が行われている。以下では最新版のSPが適用されているWindows OSWindows Vista SP2Windows Server 2008 SP2Windows 7 SP1Windows Server 2008 R2 SP1)を対象として解説する。

 Windows VistaWindows Server 2008以降でこのThumbs.dbファイルの作成を抑制する方法はいくつかある。以前のようにフォルダごとのオプションで[縮小版にファイル アイコンを表示する]を選択すればよいが(OSのバージョンやSPのレベルによっては表示されないことがある)、ユーザーごとのデフォルト設定を変更するには、システムのプロパティを利用する。コントロール・パネルなどでシステムのプロパティを表示させ、[詳細設定]タブにある[パフォーマンス]グループの[設定]ボタンをクリックする。

 

 

 

 

 パフォーマンス・オプションの[視覚効果]グループで「カスタム」を選択し、その中にある[アイコンの代わりに縮小版を表示する]というオプションをオフにする。これでThumbs.dbファイルの作成や使用が抑制されるはずである(これがそのユーザーのデフォルト値になる)。

 ただしこの設定を行っても、ネットワーク・フォルダの場合はフォルダごとに、Thumbs.dbファイルが作成されることがある。このような場合は、ローカル・ポリシーを使って設定するとよい。

 そのためにはまず[ファイル名を指定して実行]ダイアログを表示させるか、左下の検索ボックスに「gpedit.msc」と入力して、ローカル・グループ・ポリシー・エディタを起動する(ドメイン全体に対して設定する場合は、ドメインのグループ・ポリシーを編集する。ただしエディションによってはこのツールは利用できない)。そして、[ローカル コンピュータ ポリシー]の下にある[ユーザーの構成]を開き、[管理用テンプレート]−[Windows コンポーネント]−[エクスプローラー]のツリーを表示させる。

 右側にいくつかのポリシーが表示されているが、縮小表示に関する設定が4つほどある(OSSPなどで利用されるポリシーが異なる)ので、念のために、それらを全部「有効」にしておこう。End of Article

ポリシー設定

意味

[縮小表示を無効にしてアイコンのみを表示する]

エクスプローラにおける縮小表示やキャッシュの作成を無効にする。Windows VistaWindows Server 2008以降でのみ利用可能。HKEY_CURRENT_USERSoftware\Microsoft\Windows\CurrentVersion\PoliciesにあるExplorerDisableThumbnailsというレジストリ値に相当。この設定を有効にすると、パフォーマンス・オプションの「アイコンの代わりに縮小版を表示する」は常にオフになる

[ネットワーク フォルダーで縮小表示を無効にしてアイコンのみを表示する]

共有フォルダ(ネットワーク・フォルダ)に対して、エクスプローラにおける縮小表示やキャッシュの作成を無効にする。Windows VistaWindows Server 2008以降でのみ利用可能。DisableThumbnailsOnNetworkFoldersというレジストリ値に相当

[非表示の thumbs.db ファイルで縮小表示のキャッシュを無効にする]

共有フォルダ(ネットワーク・フォルダ)でThumbs.dbファイルの使用(作成/読み書き)を抑制する。Windows Vista SP1Windows Server 2008 SP1以降でのみ利用可能

[縮小表示の画像のキャッシュをオフにする]

縮小表示やキャッシュを無効にする。Windows XPWindows Server 2003以降で利用可能。NoThumbnailCacheというレジストリ値に相当

縮小表示に関するポリシー設定
縮小表示を無効にするには、これらの設定を変更する。グループ・ポリシー・エディタが使えない場合は相当するレジストリ・キーを変更する。

 

Thumbs.dbファイルとは?

 エクスプローラの表示オプションで、システム・ファイル(システム属性と隠し属性の付いたファイル)を表示するように設定変更していると(オプションの[すべてのファイルとフォルダを表示する]を選び、さらに[保護されたオペレーティング システム ファイルを表示しない]をオフにする)、「Thumbs.db」という名前のファイルが見つかることがある。
 このファイルは、エクスプローラの表示形式を[縮小版]にした場合に自動的に作成されるファイルであり、画像や写真ファイルなどの縮小版イメージ(いわゆる「サムネール画像」)のデータが保存されている。フォルダ中に画像データが含まれている場合、次回からは、その内容をすぐに表示できるように、1度アクセスした画像データの縮小イメージが作成され、このファイルに保存されている。

2011年6月3日金曜日

「想定外」などない、「想定不足」だ

 2011年3月11日という日を忘れない。自然がこれほどにも残酷なものだと思い知らされた日だ。ほんの数分前まで普通に生活していた何万もの人が、一瞬にして命を奪われた。東北の太平洋側は遠い昔から繰り返し津波の被害を経験し、万全な備えをしていたにもかかわらず大津波はそれを打ち砕いた。さらに、津波によって冷却機能を奪われた原子力発電所は日本だけでなく、世界を大きな不安に陥れている。

 この震災の報道の中でよく耳にし、眼にしたのが「想定外」という言葉だ。そのたびに納得のいかない思いがした。津波対策や原発の安全対策という人の命にかかわることで、想定外などという言い訳がましい言葉が許されるのか。

 次元は違うが我々の設計するネットワークでさえ、どんなに予測の難しい原因でトラブルが起こってもお客様に「想定外の原因でした」とは言えない。事故やトラブルを起こしてしまったら、「想定不足」しかあり得ないのだ。

 では、想定不足を防ぐにはどうすればいいのだろう。

「最悪」を避ける設計

 企業ネットワークの設計においては、機器や回線の故障、停電、災害などのリスクを想定し、それらに対して機器などのバックアップ、複数ルートの確保、バックアップセンター、などの対策を検討し、設計に反映する。

 リスクをどこまで想定すべきか、というのは簡単な問題ではない。筆者が最近設計した金融機関のネットワークでは「最悪」を避ける、という考え方をとった。

 このネットワークの基本設計で「起こりうる最悪のトラブルは何だろう」と考えた。回線は複数の通信事業者の回線を使って2ルート化し、バックアップセンターも用意されている。機器も全拠点で2重化する。万全な安全設計をしている中で筆者が「最悪のトラブル」と想定したのは、データセンターの中枢部分で使っているルーターの全面ダウンだ。

 中枢のルーターはフォールトトレラントな製品を採用しており、通信制御モジュール、回線収容モジュール、電源モジュールなど、すべての部分が装置内で2重化されていて、いずれの部分が故障しても無停止で運転を継続できる。その"無停止"の製品が停止することが起こりうると考えたのだ。

 基本設計のレビューで製品の開発元の技術者に質問した。「フォールトトレラントの製品がダウンすることはありますか?」。答えはなく無言だった。それはそうだ、ダウンすると言ったら「フォールトトレラント」ではなくなる。

 フォールトトレラントの製品がダウンすることを想定するのは考え過ぎだと言う人もいた。しかし、筆者は想定することで押し切った。開発者でさえ気づいていない想定外の故障が起こったら、最悪の事態になるからだ。

 設計目標に収めるためにはコストを無制限にかけるわけには行かない。そこで2つの方法をお客様に提示した。

 一つはフォールトトレラントの装置を2重化すること。フォールトトレラントの製品自体が2重化されているので、実質上「4重化」になる。もう一つは製品を構成するすべてのモジュールを1セット、稼働中のルーターと同じラックに用意し、万が一、ルーターのダウンが起こったら丸ごとモジュールを取り替える案だ。

 4重化案はダウンが起こっても自動で瞬時にバックアップできる。しかし、高価なフォールトトレラントのルーターが2台必要なため費用がかかる。交換用モジュールを1セット用意する方法は、4重化案に比べれば費用は安くて済むものの、手作業で交換するため時間がかかる。想定するリスクとのバランスで適正なコストかどうかはお客様の判断による。

 結果的には、交換モジュールを用意することになった。予期しないダウンが起こっても、長時間の障害は避けられる。いざというときのモジュール交換をミスなく、すばやくするためには現地の保守担当者が製品に習熟していなければならない。そのため、保守担当者のトレーニングをし、現地での作業を経験してもらった。

「想定不足」への対処の第一歩は「気づくこと」

 想定すべきリスクをちゃんと洗い出したと思っていても、想定不足はいつでも起こりうる。

 数年前、数千拠点規模のネットワークで全面的に通信不能になる、というトラブルを経験した。データセンターの計画停電の後、ネットワーク監視画面が全国で真っ赤になったという緊急の電話がケータイに入った。

 全国で通信不能なのだから、一つの装置、1本の回線が原因であることはないと分かる。ネットワーク全体におよぶ障害なら、ルーティングがらみだろうと想像もつく。「気づく」ことが対処の第一歩だ。

 このネットワークは、半年かけて新しいものに移行中だった。移行期間中はルーターが処理する経路の数が普段の数倍になり、負荷がかかる。これは設計で折り込み済みだった。しかし停電の後、センターにある複数のメインルーターが同時に復電し、ルーティングの処理を始めると高い負荷がかかることを見落としていた。

 大きなトラブルから抜け出すには「確実な方法」を取るのがよい。センターのルーターのポートを全部閉塞してルーティング処理を止め、あらためてポートを一つずつ開くことでルーティングの再計算の負荷を分散し、復旧させた。

何かを選ぶことは何かを捨てること

 晩唐の有名な詩人、李商隠だったと思いますが、次のようなエピソードが伝えられています。行き行きて重ねて行き行く李商隠は、分かれ道に来る度に涙にむせびました。土地の人が不思議に思ってその訳を尋ねると、李商隠は「1つの道を選べばもう1つの道が選べなくなる、それが悲しくて涙が滂沱と流れるのです」と答えたそうです。この話を聞いたのは学生時代ですが、まさに、トレード・オフの真髄を述べていると思います。

 トレード・オフの典型例は、社会の至る所に溢れていますが、会社の中では人事部にも巣くっています。「社員の長所を伸ばして、短所を直す。それがわが社の方針だ」などとうそぶく人事部長が皆さんの周りにいませんか? これも、およそあり得ない話です。

 人の長所と短所は同じもの(もしくはコインの表と裏)であって、要はその人の個性そのものです。例えば、「自分の意見をはっきり述べる」というグローバルな長所は、わが国のような同質化圧力の強い鎖国的な社会では「ともすれば協調性に欠ける」と見なされがちです。この人に沈黙を強いたら、どうなるでしょう。

 短所を直せば同時に長所もなくなってしまうのです。人は、本来、皆三角形、四角形のように尖っているのです。短所を直そうとせっせと角を削れば、小さい円になってしまいます。少しは円満になるかも知れませんが、面積(能力、個性)は間違いなく小さくなるのです。わたしは「小さい円より大きな三角、四角」の方がはるかに好ましいと思っています。

 反論が出るかも知れません。「尖った人ばかりで組織運営ができるのか」と。それでは、マネジメント失格です。古い石垣を見てください。ごろごろした尖った自然石が不規則に積まれています。しかし、長い風月に耐え至って頑丈です。

 現代の石垣のように、同じ形をした同じ大きさの石を積み上げれば、工事はきっと楽でしょう。しかし、同じ形をした同じ大きさの人間は、2人といないのです。人事の妙は、個性の異なった人間を上手く組み合わせて古い石垣のような組織を創り上げることにあるのです。

 人間はそれほど賢い動物ではないので、頭ではトレード・オフが理解できても、なかなか行動には移せないところがあります。では、どうすればいいのか? ケース・スタディーを積み重ねることが1番です。

 わたしは「タテ・ヨコ思考」と呼んでいますが、要は、まず、昔の人に教えて貰えばいいのです。すなわち、古典を読んで、昔の人がどのように考えどのように生きてきたかを学ぶべきです。

 次に、世界の人に教えて貰えばいいのです。世界中を旅して、人々の生きざまを学ぶべきです。タテ(過去)・ヨコ(世界)のインプットをひたすら増やし続けることが、直感や判断力を鍛え行動力を産む唯一の方法なのです。

「5つの項目」に集約=報告のしくみです

 報告を受ける1番の目的は現場を知ることです。真実は現場にあるので、現場を知らなければ、何も始まらないからです。ところが、報告システムがなければ、現場を知ることはできません。

 社長以下幹部が集まって、真実を知らないまま「ああしよう、こうしよう」と戦略会議を行っている会社に将来はありません。すべてのスタートは現場を知ることです。

 では、いったいどうすれば現場の真実を知ることができるのか。この機会に「報告のあり方」を徹底的に見直してみてください。

 報告項目は次の5つです。

(1)数字

(2)お客様の情報

(3)ライバルの情報

(4)取引先の情報

(5)自分の意見

 この5つを満たさないものは、報告として価値がありません。

 報告のフォーマットは、5つの項目をA4の用紙に2行で記載するのが基本です。1つの報告をダラダラと長文にするのではなく、(1)から(5)までの情報を件数を多く報告するのが基本です。社長は事実のみを知りたいのです。「各項目は2行」と決めると、むだなことを作文するすきが与えられず、真実のみが記載されます。これが一番効率的です。

上司が部下に話を聞きに行く

 そもそも、会社はピラミッド型で成り立っています。頂点に社長がいて、その下に部長や課長がいて、さらに下には平の社員、パート、アルバイトがいます。

 指示・命令の報は、この三角形の上から下へ向かって流れていくので、情報も自動的に上がってくると思い違いをしている場合が多いのが現状です。情報は、上司が部下に話を聞きに行いって初めて、まともな報告が得られます。それをせずに、「なんで報告しないんだ!」といくら怒鳴っても無駄です。

 つまり報告のしくみとは、上の人間が下の人たちのところへ行って、情報を収集する形です。それも「嫌でも、情報収集をせざるを得ない」状況がポイントです。

 順を追ってみていきましょう。まず、社長が部長を集めて会議をします。その席では、当然5つの項目について報告を受けます。会議の冒頭から社長があれこれ話し始めるケースがよくありますが、そんな話は無意味です。部下の報告を聞いて、現場(真実)を把握しなければ、いかなる内容も判断しようがありません。

 会議の席で社長がすべきことは、部下の話を聞くことです。実際に報告を聞き始めると、各部長がどれだけ情報収集をしているかが如実に分かります。

 (1)の「数字」は、どんな部長でも話すことができます。エクセルシートなどでデータを確認すればすぐに分かる。しかし、(2)の「お客様の情報」、(3)の「ライバルの情報」、(4)の「取引先の情報」になると、部下から話を聞かないと現状は分かりません。そして、情報が不十分な部長ほど、(5)の「自分の意見」を適当に話し始める。

部下からの情報収集を怠って、まともな報告ができない部長はすぐに更迭します。それが分かっているので、部長は会議の前に課長のところへ行って、しっかりと報告を受ける。すると、今度は部長と課長のやりとりです。

 会社の規模や組織にもよりますが、課長クラスになると、(4)の「取引先の情報」は把握していることが多い。なので、部長に対して詳細に報告することができます。

 ところが、(2)の「お客様の情報」、(3)の「ライバルの情報」は、直接お客様のところへ出向く社員、お客様からの連絡を受けるパートやアルバイトに話を聞かなければ、詳細なところは分かりません。

 課長は、部長から「お客様の情報を教えてくれ」と言われたとき、「いや、自分にはちょっと分かりません」と言うわけにはいきません。そんな職務怠慢な人には、すぐに減給や降格が待っているからです。

 そこで課長も、日頃から平の社員、パート、アルバイトの人たちのところへ行き、「お客様はどう言っているのか」「ライバル関係で、何か動きはあった? 」と具体的で、詳細な情報収集を欠かさない。

 これが、まともな組織における報告のしくみです。

2011年6月2日木曜日

働くと評価

 自分が会社をクビにならなくとも、会社そのものが跡形もなくなってしまうことがある。どんなに働きたくても、どんなに雇い続けたくても、それができない状況に突然陥ることがある。そばにいて当たり前だった家族が、一瞬にしていなくなることがある。

 会社のためよりも地域のため。仕事だけでなくボランティア。仕事よりも家族。それまでの価値観が変わったことを自覚した人もいれば、何だかモヤモヤした思いを抱き続けている人もいる。それくらい「3・11」はショッキングな出来事だったのである。

 そんな社員たちの微妙な価値観の変化に気づいたトップの嗅覚は、優れている、と捉えることもできるだろう。いやいや、ひょっとするとこの方自身が、将来に対する漠然とした不安に駆られ、社員たちの言動に過敏になっているだけなのかもしれない。

 仕事が収入のための手段であっても、何らおかしなことではない。だが、社員にはレイバー(労働力)として目の前の仕事をこなすのではなく、ビジネスをしてほしい。そう願ってやまないのがトップたちだ。

 「労働」ではなく、創意工夫を凝らしてより付加価値をもたらすビジネスをしてほしい。給料はそのために払っているんだ、と。

 当然、40代の社員たちはそんなことくらい理解していると思っていた。その40代までが「労働に徹しよう」と言うのか? そんな一抹の不安を震災以降に感じることが増えたそうだ。

 どんなにトップがけしかけようとも、下から見上げれば、それが「嘘」であることくらい分かる。会社は必ずしも公平じゃない。正論を言うことはあっても、誠実とは限らない。上が使いやすい人が上がる。自分は、ここで終わる。それは、早く見切りをつけた人ほど分かるのだ。

 しかも、よ〜く考えてみてほしいのだ。会社だって、「出世したがる人」だけを求めているわけではないはずだ。出世することも昇給することもなくても、毎日毎日、ほかの人があまりやりたがらない地味な仕事を続ける社員も必要としているはずである。

 会社は、一部のパフォーマンスの高い社員だけが支えているわけじゃない。出世したり昇給したりすることがなくとも、地味な仕事でも、ほかの人がやりたがらないような仕事でも、腹の底から真面目にやり続ける社員こそが、組織の土台を作っている。彼らこそが、「会社のため」に、「会社を背負って」働いているのではないだろうか。

 言い過ぎかもしれないけれど、むしろ、パフォーマンスの高い人の方が自分のために働いているんじゃないかと思ったりもする。「会社のため」ではなく、「自分のキャリア」のために。会社を背負うのではなく、自分のキャリアを積み重ねるために。

 自分たちはどういった人たちを評価してきたのか? 公平に扱ってきたのか? 誠実に評価したのか?

 企業のトップたちはこうしたことを自問して、反省すべきではないか。会社にとって必要なのは、出世したがる社員だけではないということを。パフォーマンスが高い社員だけを求めているわけじゃないということも。

「分かる」から「できる」に

 IT業界では、たくさんの勉強会が開かれています。さまざまなエンジニアの体験やノウハウを知ることができ、新たな出会いもあるため、勉強会に参加することを楽しみにしているエンジニアは多いことでしょう。

 ですが、勉強会は参加するだけではあまり意味がありません。今回は「分かる」と「できる」の差は大きいというテーマで、勉強会で学んだことを生かすために必要なことを紹介します。

「分かる」「できる」の違いを分かっていますか?
「分かる」——理論・知識・手法が理解できる
「できる」——学んだことを自分で実践できる

 知識を得ることは、とても大切です。しかし、知識を得るだけでは、何もできないのにできるようなつもりになってしまい、「もう十分知識はあるから、これ以上必要ない」と思考停止状態に陥ってしまう可能性があります。エンジニアとしては「分かるだけの評論家」にはなりたくありません。エンジニアなら「実際に手を動かすことができる実践者」でありたいものです。

 ここで、なぜ「分かる」だけでは「できない」のかについて考えてみましょう。結論から言えば、「できる」ようになるためには、実際の体験や行動から得られる情報が必須だからです。

 人は無意識に行動していることがままあります。自転車で曲がり角を曲がる瞬間を思い浮かべてください。バランスを取り、体重移動する瞬間の感覚を、言葉や映像ですべて表現することは不可能です。

 また、プロフェッショナルほど、徹底的に繰り返して体に覚え込ませ、無意識レベルで実践できるまで技術を高めます。熟練しているからこそ、言葉にするのが難しい技術はたくさんあります。

 このように、「分かる」だけでは情報としては不十分です。言葉になっていない部分を実際に体験することで、初めて「できる」ようになるのです。

2011年6月1日水曜日

人を見抜く力をどうやって身に付けるか

 『三国志』の時代、日本で人気の高いのは「孔明の罠」でとりあげた諸葛孔明ですが、彼には一つ大きな欠点がありました。それは、主君であった劉備に比べて、人を見る目がなかったこと。

 孔明は宿敵の魏に攻め入ろうとしたさい、最も重要な部隊の指揮官に劉備が「あいつは口だけなので信用してはならん」と言い残していた馬謖を抜擢。しかし、それが裏目に出て、作戦を失敗させてしまうのです。

 「泣いて馬謖を斬る」で知られる有名な故事ですが、ではなぜ、この「人を見る」という点で劉備よりも孔明の方が劣っていたのか。筆者は昔、作家の陳俊臣さんに、インタビューのさいこの疑問をぶつけて見たことがあります。陳さんの答はこうでした。

 「孔明は、若かりしとき戦乱を避けて荊州に引きこもっていました。そこで勉学に励んでいたのですが、現実にもまれる機会が少なかった。それが原因だったのではないでしょうか」

 確かに孔明は若かりし頃、戦乱をさけて荊州で晴耕雨読の生活を送っていました。一方、劉備の方は若い頃からムシロなどを売って糊口をしのぐ毎日。人を見抜いたり、人の気持ちがわかる力を身につけるには、自分と価値観の違う人々のなかで、若いうちから揉まれる経験がまず必要ということなのです。この点は座学だけではどうしようもない面があります。

 え、そんなこと言っても自分はもう若くないし、今さら言われても困るよ、という方もいらっしゃるかもしれませんが、でも大丈夫。中年以降でもこれは鍛え上げることができます。

 井原さんは、二十代は法律、三十代は歴史、哲学と十年ごとにテーマを決めて勉強を続けていて、人柄と才能はもちろん、その研鑽の結果が評価されてのことでした。学歴がないにもかかわらず、これは異例の出世だったのです。

 しかし、そこで有頂天になっていた井原さん、上司に「自分の長所を教えてくれ」と言った所、「それがお前の欠点だ」と言われたことから自分の慢心に気づいたそうです。そこで一念発起して実践したのが、市井で働く人々との交友でした。

 一九五〇年前後は、上野公園の西郷さんの銅像の裏に、千五百人くらいの路上生活者がいたそうですが、そのなかでたばこの吸い殻を生業にしている人に声をかけたのを手始めに、イミテーションの指輪を売っている画学生、流しの歌手、石焼きイモ屋さんなど、以後二十年以上にわたって交友を続けた人は四十人近くいたそうです。

 これは現代に置き換えれば、次のような感じです。昨今、盛んに行われている異業種交流会などに参加して、みなさんが、今まで思いもよらなかったような新たな知見を得られたとします。職場に帰り、その新たな知見で上司や部下を見渡すと、今までは気づかなかった側面が見えてきた——そんな経験、お持ちの方もいらっしゃるのではないしょうか。

 つまり、自分の知らなかった世界を通して、人の事情を知る、人の価値観を知る、人の感情を知る、そんな経験の積み重ねが「感情移入能力」を高め、人の気持ちを察する力を自ずと鍛え上げてくれるのです。

自動実行のレジストリキー

HKLM\SOFTWARE\Microsoft\Windows NT\CurrentVersion\Winlogon\Userinit
HKLM\SOFTWARE\Microsoft\Windows\CurrentVersion\Policies\Explorer\NoDriveTypeAutoRun
HKLM\SOFTWARE\Microsoft\Windows\CurrentVersion\Run
 これらのレジストリキーは、いずれもプログラムの自動実行に関係するものだ。1つ目と3つ目は指定したプログラムを自動実行するために使用され、2つ目はUSBメディアなどにおける自動実行機能の有効/無効を切り替えるために使用される。そして同時に、ウイルスが非常によく利用するレジストリキーの一部でもある。