2011年6月14日火曜日

MBO(経営陣が参加する買収)の光と影

 MBO(経営陣が参加する買収)に踏み切る企業が増えている。実施企業はこの5年で421社に上る(M&A助言のレコフ調べ、2006〜2010年度)。CD・DVDレンタル店「TSUTAYA」を運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)、引っ越し業のアートコーポレーション、ベビー用品大手のコンビなど、その業種は様々だ。

 400以上もの企業がMBOに踏み切るからには、それなりのメリットがあるはず。一般的な説明では、経営陣が自社株を握ることで、「思いのままに会社を運営できる」「業績を上げれば株式の売却益が懐に転がり込んでくる」など、"いいことづくし"に思えてくる。だがしかし、それはMBOの一面にすぎない。

 経営陣が買収に参加するといっても、サラリーマンのポケットマネーではすべての自社株を買い取ることなどできないのが実情だ。通常は投資ファンドがMBOを支援する。その場合、投資ファンドが9割以上を出資し、経営陣の出資比率は数%というケースがほとんどだ。当然、MBO後は投資ファンドが大株主として君臨する。

 一般的に、投資ファンドはMBO後3〜5年でIPO(新規株式公開)して投資回収に動き出す。ならば経営陣はIPOに向けて3〜5年で業績を向上させねばならない。

 MBOの実施前は経営陣と投資ファンドが夢を語り合い、意気投合している。しかし、蓋(ふた)を開けてみれば、経営陣が当初の計画通りには業績を向上させられないことが少なくない。

 挙句の果てに、投資ファンドが経営者をお払い箱にしたケースすらある。MBOとは、まさに自分のクビを賭けて背水の陣を敷く行為なのだ。もちろん短期間で業績を改善させ、経営陣も投資ファンドも大儲けできた事例はある。

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