2011年6月7日火曜日

組織力とは何か

 そもそも組織が存在するのは、個人ではできない仕事や目的を達成するためです。ここでは組織力を「組織の目的をより効果的または効率的に達成する力」としておきます。バーナードは組織を協力のシステム(cooperative system)と定義し、大きな石を動かすことを例として挙げています。石を動かすことであれば、目的はきわめて明確で、10人集まれば、5人の時の2倍の力が出るでしょう。しかし、現実には、公共機関にしろ、企業にしろ、目的はもっと複雑ですし、個人の仕事や担当する役割も多岐にわたっています。ですから、10人の組織が、5人の組織の2倍の力を持つとは限りません。組織のマネジメント次第で、3倍になることもあれば、1.5倍かそれ以下になることもあるのです。

 組織力を高めるとは、目的達成のために、そこに集まる多様な個人の力を結集し、個人の力の総和以上の力を発揮することです。そのためには、個人1人ひとりの役割がはっきりと認識され、その役割が全力で果たされなくてはなりません。役割とは、機能(例:生産、マーケティング、セールス)だけでなく、階層によっても異なります。

 気をつけなくてはならないのは、個人個人に明確に役割が分担され、その役割が果たされる=組織力が高い、とは必ずしもならないことです。「役割を明確にする」ことは大切ですが、組織に必要な機能、仕事のすべてを明確にすることはできません。環境が変われば、これまでにない仕事も当然でてきます。「私の仕事ではないからやらない」というのであれば、幸運の女神の前髪をつかむことは決してできないでしょう。そして、組織力は「分担」された個人の役割が、組織として「統合」されて初めて発揮できるものです。1つひとつの歯車が、ぶんぶん空回りしているのではなく、目的達成に向けてかみ合ってこそ、個人ではできない大きな仕事ができるのです。

 その意味で、組織力とは「個人個人の役割がきちんと果たされること」だけではなく、役割としてはっきり規定できない隙間が埋められ、さらには「個人個人の仕事を組織の力として結びつける」ことがどうしても必要になります。後に何度も触れますが、組織において「分業」「専門」という話はよく聞きますが、「結び付ける」「統合」という点については十分な注意が払われていないのではないかと思います。「力を合わせる」ことや「チームプレー」の大切さはいろいろなところで指摘されていますが、だから組織として何が必要かという議論にはならず、個人の心構えの問題として済ませられていないでしょうか。

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