2011年6月8日水曜日

どうすれば部下からより多くの自発的な発言や行動を引き出せるか

リーダーとして方向性を示すことも大事だけれど、いかにメンバーに考えさせるかということも大変重要であると認識した。しかし、こちらが問いかけても部下はなかなか思うように言葉を発してくれない。自分が積極的に話しかけても、いまひとつの反応しか示さない。そんな部下の様子は、上司自身だけでなく部署のだれもが察知し、気にするものです。チーム全体の士気を高めるのに、けっしてプラスに作用しません。
部下からより多くの自発的な発言や行動を引き出せるには、合わせ技で話しやすい環境を整える必要です。
・どんな風に質問に応えてほしいかを、あらかじめ伝える
・答えがただ1つでなく、いくつもあるような質問をする
・質問に応えてほしいときは、質問をさせる

 この3つをうまく組み合わせれば、かなり相手の発言量や積極性は増すと思います。

 1つ目は、「どのように質問に応えてほしいかを、あらかじめ伝えておく」ということです。
 コミュニケーションは、「セッティング」が何より大事だといえます。「セッティング」というのは「仕込み」のことです。
 相手がどんな状態であったとしても、部下にいきなり話しかけて、切れ味鋭い質問を投げかけ、相手に話をさせる。これは相当難しい。出たとこ勝負でコトが済むなら楽ですが、現実にはなかなかそうはいきません。
 性格、体調、都合や立場、それにその瞬間どんなことを考えているか。相手の状態は千差万別です。もちろん、相手の思考を引き出すことを目指して、問いを効果的に活用できればよいのですが、いきなり相手の心の中に入り込むような質問を繰り出すのは簡単ではありません。
 そこで大切になるのがセッティングです。セッティングといっても手間のかかる準備は要りません。要は、質問する前に自分が求めていることを伝えてしまうわけです。
「これからいくつか質問をしたいんだけれど、まとまらなくても思いつく言葉を挙げるだけでいいから、話してほしい」
 ぺらぺらと緊張感なく話せる人は別として、たいていは、自分の話がうまくまとまるか、きちんとしているかを気にします。ですからその負荷を下げるのが先決です。
「どんな言い方でも、どんなにつまらないことでもいいから、まとまりなくぱらぱらとでいいから話していただけますか」。コーチングのセッションでも、あらかじめこのように伝えておくかどうかで、相手の発言量は驚くほど変わります。
 逆に、饒舌になりやすく、何を言いたいのか分からなくなるような部下の場合は、あらかじめ次のように伝えておきます。
「これから質問をいくつかしたいのだが、いいかな。こちらが理解をするために必要なことは適宜、尋ねるので、まずは結論から言ってほしい。途中で割って入ることもあるかもしれないけれど、それは理解を早めたいからで、遮ることが目的ではないので、覚えておいてほしい」
 要するに、こちらがどんな対話を繰り広げたいのか、その要望をあらかじめ伝えておくわけです。自分が意図することを相手がイメージできるように伝えれば、相手はそのイメージに沿って会話してくる可能性が高まります。

 2つ目は、「考えたり話したりするのが楽しくなるような質問をする」ということです。
「1+1はいくつかですか?」と聞かれるのと、「答えが2になる計算式には、どんなものがあるでしょう?」と聞かれるのでは、ずいぶん勝手が違います。
「1+1」の答えは1つしかありません。たった1つの正解しかないという前提で質問をされると、部下の側には心的なプレッシャーがかかります。
「営業でいちばん大事なことは何だと思う?」
 このような質問を、「答えは1つ、俺が20年かけて到達した正解を言ってみろ」というような表情でされれば、部下は相当なプレッシャーを感じます。「上司の思っているとおりに答えられなかったらどうしよう、きっと怒られる」と身構えてしてしまう。
「上司の期待している答えを察しなければならない」。あるいは「これ以上、怒られたくない」。はたまた「相手にばかだと思われたくない」。そんな感情を抱かせるような質問ばかりしていては、部下は答えることに、楽しみではなく、恐れを抱くようになります。
 そうではなく後者の「答えが2になる計算式は」と聞くパターンで接してみる。

「営業で大事なことには、どんなことがあると思う?」
 さらに、次のような言葉も加えてみます。
「いろんな解があると思う」
「正解はないが、大事なのは君に考えてもらうことだ」
「どんなセリフでもいいからまずは口に出してみよう」
 このような言い方で問いを投げかけることができれば、相手は質問の中に自分の価値観や経験を投影することができ、楽しくなります。
 そもそも質問は、投げかけられた人がそこに自分の価値観や経験を投影し、自分をつまびらかにしていくプロセスで、受けて答えて楽しいものであるべきなのです。
「一生に一度でいいから行ってみたい世界の場所ってどこ?」
「もし生まれ変わることができるとして、どんな職業にもつけるとしたら何をやってみたい?」
「あなたってどんな人なの?」
 こうした質問に応えるとき、人は自分の嗜好性、価値観、ものの見方を総動員して、自分の中から言葉を紡ぎ出そうとします。その瞬間、"改めて自分を知るような感覚"が起きます。つまり、この手の質問は、相手の自己発見を導き出す道具となるのです。
 同様に、自由に答えてもらうことを前提にして、「営業で一番大事なことにはどんなことがあると思う?」と投げかける質問は、部下にとって、自分の営業に対する思いや考えを結実させる格好の手段となるはずです。部下がこうした質問を嫌うことはありません。

 3つ目のポイントは、「質問に応えてほしいときは、質問させる」ということです。
 質問の場では、質問する側が対話の主導権を握り、される側は話に付いていきます。対話をコントロールするのは、どちらかというと質問する側になります。対して、質問される側は受け身になりがちで、つい防御態勢に入りやすいのです。
 受け身でいる相手に対しては、当然、自発的で、率直で、正直なアウトプットは望めません。
 コミュニケーションの姿勢が能動的になれば、逆に質問された時も、積極的に話すようになります。
 コーチングをしていても、受け答えがどこか他人ごとのようで、質問されるから話しているといった様子がうかがえるクライアントには、立場を逆転させて質問をしてもらうことがあります。
 自分の中の興味や関心、好奇心を立ち上げなければ、たいした質問はできません。質問する側に回ってもらうことが、その人の会話に対する姿勢を自ずと能動的にさせるのです。

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