福島第一原発1号機からの放射性物質の放出に伴って広がる住民の被曝(ひばく)。
具体的に、健康にはどんな影響が出るのだろうか。
福島第一原子力発電所の正門付近で13日午前8時20分ごろに記録した毎時882マイクロ・シーベルトは、短時間の被曝であれば、健康に影響が出るレベルではない。
仮に正門付近にいて、1時間放射線を浴びたとしても、東京—ニューヨーク間を航空機で4往復した際の放射線量と同じ。一般の人が日常生活で1年間に浴びる2400マイクロ・シーベルトは、正門で3時間ほど放射線を浴びる量に相当する。
放射線による健康影響が生じるのは、放射線が遺伝子などを傷つけてしまうためだ。被曝後、数週間以内に出る急性の症状と、数か月から数年以上たってから出る症状がある。
2〜3週間以内に出る症状は免疫力の低下や貧血、出血など。骨にある骨髄が被曝でダメージを受け、白血球や赤血球などを作る機能が損なわれるため、こうした症状が出る。免疫力が低下すると、感染症にかかりやすくなる。腸管や脳が障害を受けることもある。
被曝後すぐに症状が出なくても、数か月から数年以上たってから、白血病や甲状腺がんなどを発症することもある。
妊娠から間もない妊婦が放射線を多く浴びると、胎児に奇形などが生じる危険性もある。
被曝には、体の外から被曝する「外部被曝」と、放射性物質を吸い込み、体の内側から被曝する「内部被曝」がある。内部被曝の場合、放射性物質の排出を促す薬を服用するなどの対策が必要になる。
原発事故に備え、事前にヨウ素を服用すると、内部被曝を抑える効果が期待できる。事前に放射性のないヨウ素を取り込むと、事故で空気中に放出される放射性ヨウ素が、排尿によって体外に放出されやすくなる。
放射線には、中性子2個と陽子2個からなる「アルファ線」、高速の電子が「ベータ線」、エネルギーが高い電磁波である「ガンマ線」など様々な種類があり、それぞれに健康影響には違いがある。
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