2011年5月11日水曜日

3段階で取り組む企業のBCP、まずはコミュニケーション強化から

このたびの大震災を受けて、多くの企業は事業継続計画に対して目の色が変わってきている。企業は具体的にどのようなBCP対策をすべきか。ITの側面から大きく3つのポイントを挙げて説明する。
 1つ目が「コミュニケーション」である。地震発生直後の緊急時には、社員および設備の被害確認などによる正確な情報把握と状況の見える化が重要だ。特に拠点を複数持っている企業は、並行して復旧作業に当たる必要があるため、より被災状況を見える化するとともに、対策手順をアシストするITの仕組みが不可欠だろう。
 これを支援するITツールとしては、社内ポータルを頂点に、安否確認システム、資産管理システム、社内SNS、企業の公式Twitterなどが挙げられる。特に今回の震災においては、一時的に電話通信が機能ストップする中で、Twitter、Facebookといったソーシャルメディアを使った被害情報収集や安否確認が目立った。これらのツールの有効性を実感し、非常時のコミュニケーション基盤として取り入れた企業も少なくないという。
 2つ目は、「業務」におけるBCP対策である。例えば、震災によって社屋が損傷したり、交通網が寸断したりして出勤できない場合でも、企業存続のためには経済活動の歩を止めることはならない。そこで暫定的な処置として、在宅勤務や遠隔地でのテレビ会議などによるオフィス業務の代替が必要となってくる。在宅勤務やテレワークについては、これまで主に仕事と家庭の両立を目指す「ワークライフバランス」の観点で語られることが多かったが、震災以降はBCPの色合いが強まりつつある。
 実際、ITRにも在宅勤務に関する企業からの相談が増えているという。中でもIT部門の多くが重視するのが、セキュアなリモートアクセス環境の構築である。オフィスと遜色ないレベルで業務を遂行するためには、当然、ファイルサーバなどの社内システムにアクセスする必要性が出てくる。その際、ユーザー認証の仕組みや企業データの流出防止などについて多くの担当者が工夫を迫られている。それを実現するためのITツールとして、「仮想デスクトップやシンクライアントの技術が再評価されている」というわけだ。
 今後ますます重要になるのが、3つ目のポイントとして挙げられている、調達の生産販売、物流といった「事業」の継続、強化である。従来までも、調達、生産、物流、販売の情報共有や一元管理という議論はなされていたが、今までにも増して実務的なレベルで必要になるという。
 これから夏に向けて大規模な節電が迫られるほか、いつまた新たな震災が発生するかもしれないという中長期的なスパンで考えたとき、業務の弾力性や柔軟性が確保できるようなシステムの構築が焦点になる。具体的には、サプライチェーン管理(SCM)やビジネスプロセス管理(BPM)の強化がよりいっそう重要性を増してくる。
 これまで企業では、ルールに従って決められた通りに運用できる"ガチガチな"システムを作っていたが、いかなるビジネスフローの変更にも対応できる柔軟なサプライチェーンなどのシステムが不可欠になる。同時に、ビジネスプロセスを定義してそれをシステムに落とし込んでいくBPMや、それを推進する上で業務の実施状況やパフォーマンスを監視するBAM(ビジネスアクティビティモニタリング)にも注目が集まっていくと見ている。具体的には、業務を1つのサービスとしてとらえ、SOA化やジョブ化の中長期的な推進が考えられる。

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