資源は限られているからです。ヒト、モノ、カネという意味でもそうですし、時間という意味でもそうです。限られた資源でやりたいことすべてをしようと思うと、資源は分散します。結果として、何一つ満足な結果が出ないで終わります。つまり、トレードオフとは、大切なものを守り抜くための要なのです。限られた資源の現状を踏まえ、取捨選択をすること、「肉を切らせて骨を断つ」ことこそが戦略なのです。
その意味で、トレードオフは「あきらめ」「不公平」をすることだといえます。しかし、「不公平」をすることこそが最大幸福への道なのです。傾斜生産方式でいえば、まず基幹産業を強くし、そこを足場にして経済全体を復興させようという考えであったわけですし、会社による本業回帰にしても、資源の分散による競争力の低下を防ぎ、企業を再び成長路線に戻すことを通じて社員や株主の幸福を目指すために行うものです。逆に、野球のチームで、上手な選手が試合に出れば決勝まで行けたのに、「公平」を期すために、全員が順番に出て1回戦で負けてしまえば、いったい誰がうれしいのでしょうか。
ところが、多くの「戦略」はあれもやりたい、これもやりたいというリストが並ぶばかりで、何を捨てるかが明確であることがありません。特に、政府の場合「○○を捨てる」というと、すぐにどこかから「弱者切捨てか」といった文句が入る。結果として、みんながハッピーになり「そう」な理想の姿を並べるしかないように見えます。当然ですが、資源は限られているわけですから、優先順位の低いものに対しても資源を振り向ければ、本来集中投下するべき事業や課題に対して使える資源量が減ってしまいます。結果として、閾値に足りず、思ったような結果が出ないのが「失われた10年」であったのではないでしょうか。本来優先される経済復興が後手に回った結果、それで得られるはずだった税収もえられず、その税収でまかなわれるはずだった弱者救済は達成できないでいる。最大多数の最大幸福どころか、誰も幸福にならない時代が続きます。
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